中古マンションを購入し、リフォーム・リノベーションを施して居住する方が増えています。
新築に比べると、居住者の価値観やライフスタイルに合った住まいを比較的手の届きやすい価格で手に入れられることから人気を博しているようです。
しかし、アットホーム(株)が行った「中古住宅のリノベーション実態調査」によれば、中古マンションを購入してリノベーションした方のうち「新築を検討していた」と回答した人は12.3%にとどまりました。
新築をあきらめて中古リノベーションを選択している割合は低く、むしろ主体的・積極的に中古マンション+リノベーションを選択していることが分かる結果と言えるでしょう。
この記事では上記調査の結果から、中古マンションを購入してリノベーションを施す際の注意点について考えてみたいと思います。
<中古住宅のリノベーション実態調査概要>
・調査対象/過去 5 年以内に中古住宅を購入し、リノベーションをした全国の 20 歳以上の男女 309 名
・調査方法/インターネットによるアンケート調査
・調査期間/2019 年 10 月 25 日(金)~10 月 28 日(水)
・調査回答者/
中古マンション購入者 | 中古戸建て購入者 | |
男性 | 87名 | 67名 |
女性 | 82名 | 73名 |
合計 | 169名 | 140名 |
※リノベーションの定義について
本調査では、リフォームとリノベーションの定義を回答者に提示し、「リノベーション」を実施したと回答した人のみに回答。
・リフォーム:老朽化した建物を新築の状態に戻すこと
・リノベーション:大規模な工事を行い、住まいの性能を新築の状態よりも向上させたり、価値を高めたりすること
目次
中古マンションのリノベーションを行った方の7割が最初から中古物件を検討
<表1>住宅を購入する際、最初に検討したのは、新築・中古のどちらですか?(択一)
新築 | 12.3% |
中古 | 68.9% |
こだわりなし | 18.4% |
わからない / 覚えていない | 0.3% |
出典:アットホーム(株)「中古住宅のリノベーション実態調査」
<表2>リノベーション前提で中古住宅を購入しましたか?中古住宅を検討している最中にリノベーションを検討し始めた方は「いいえ」とお答えください。(択一)
はい | 77.0% |
いいえ | 23.0% |
出典:アットホーム(株)「中古住宅のリノベーション実態調査」
https://athome-inc.jp/wp-content/uploads/2019/12/2019120901.pdf
<表1>は、中古マンションを購入してリノベーションをした方が住宅購入検討初期に検討していた物件について、<表2>はリノベーション前提で中古住宅を購入したかどうかについてそれぞれ聞いたものです。
それぞれの調査結果から、約7割が購入検討初期から新築を検討することなく、中古マンションを購入してリノベーションを行うつもりであったことが分かりました。
近年、都心部を中心に新築マンションの価格が高騰しており、予算に合わせて中古マンションも並行検討するという方が増えています。
しかし、中古マンションを購入してリノベーションした方は、新築を諦めて中古マンション+リノベーションを選択したのではなく、主体的にリノベーションを選択していることが分かる結果と言えます。
中古マンション+リノベーションを選んだ理由は「自分好みの内装にしたい」が70.4%
中古マンション+リノベーションを選んだ理由は「自分好みの内装にしたい」が70.4%
<表3>購入した中古住宅のリノベーションに踏み切った理由は何ですか? (複数回答)
中古マンション 購入者 |
中古戸建て 購入者 |
|
内装を自分好みに 変えたかったから |
70.4% | 58.6% |
間取りを変えた かったから |
36.1% | 39.3% |
新築の注文住宅 よりも安くカスタ マイズできるから |
27.8% | 32.1% |
新築気分を味わい たかったから |
30.8% | 21.4% |
新築に気に入った 間取りデザイン等 がなかったから |
10.1% | 7.9% |
その他 | 8.3% | 7.9% |
出典:アットホーム(株)「中古住宅のリノベーション実態調査」
<表3>は、中古住宅をリノベーションした理由に関する調査結果をまとめたものです。
中古マンション・中古戸建て購入者の理由を比較すると、中古マンション購入者の方が「スタイル」や「デザイン」に関連する項目をリノベーションの理由として回答する割合が高くなっています。
その一方で、中古戸建て購入者は間取り・安さ等に関連する回答の割合が中古マンション購入者よりも高くなってることが特徴的です。
リノベーションにかかる費用「当初予算から約20%増加」
リノベーションにかかる費用「当初予算から約20%増加」
<表4>中古マンションリノベーションにかかった費用
中古マンション |
||
総予算 | 2,411万円 | |
かかった費用の総額 | 2,857万円 | |
内訳 | 住宅購入費用 | 2,401万円 |
リノベーション にかかった費用 |
456万円 | |
その他 | 住宅購入にかか った期間 |
5.2ヶ月 |
リノベーション にかかった期間 |
1.8ヶ月 | |
購入時の築年数 | 20.8年 |
出典:アットホーム(株)「中古住宅のリノベーション実態調査」
<表4>は、中古マンション+リノベーションにかかった平均費用をまとめたものです。
総予算の平均が2,411万円に対して実際にかかった費用の総額が2,857万円となっており、予算額から約18%上昇していることが分かります。
アットホーム(株)が行った2020年の調査によれば、中古マンション購入者の平均予算が3,309万円に対して平均購入価格は3,368万円となっており、その上昇率は約1.7%となっています。
中古マンションの購入に比べて、中古マンション+リノベーションの方が費用の増額幅が大きいことが分かる結果となっています。
まとめ
ここまで、中古マンション購入者のリノベーションについて、施工箇所とその理由や予算について考えてきました。
中古マンション+リノベーションに関するポイントは以下の通りです。
・中古マンション+リノベーションを実施した人の約7割が最初からリノベーションを行うつもりで中古マンションを購入している
・リノベーションを行った理由として、自分好みの住まいを実現すると回答した割合が高く、特に中古マンションにその傾向が顕著
・中古+リノベーションでは、中古マンション購入に比べて、費用が膨らむ傾向にある
今回の調査を総合すると、住まいに強いこだわりを持つ人が、その実現のために中古+リノベーションを活用している実態が見えてきました。
実際、中古マンション+リノベーションを行った人の95.8%が「(リノベーションに)満足している」と回答しており、こだわったが故に満足率も高まる傾向にあるようです。
その一方で、こだわりがあるがために予算が膨らんでしまう傾向があるようで、見積もりをとったら当初予算を大幅にオーバーしてしまったというケースも少なくないようです。
そこでポイントとなるのは、住まいの理想を中古+リノベーションで実現するためには、まず実現したい優先順位を付けた上で、費用対効果を検証しながら進めていくことです。
そのため、場合によっては取捨選択や別の方法による代案の模索が必要になりますので、不動産だけでなくリフォーム・リノベーションに精通しているプロの知見が欠かせません。
実績豊富な不動産会社と連携し、最適な提案を比較検討・選択することで、こだわりの住まいを納得した形で作り上げていくことが可能になります。
【書いた人】柴田 光治
株式会社トラストリー 代表取締役
リフォーム不動産深川studio 代表|深川くらし相談所 所長
宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士、公認 不動産コンサルティングマスター
一般社団法人不動産エージェント協会 既存住宅流通活性化副委員長
不動産業界歴35年以上。一部上場不動産会社在籍中に執行役員として売買事業を統括し、主に不動産流通に関わる。
50代で今の会社を立ち上げ、地域密着型の不動産会社としてお客様に寄り添ったわかりやすい提案を身上とする。自らも築20年の自宅マンションをリノベーションした経験を持つ。
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