「最近は値下がりしてるって聞いたけど」。そう聞かれる機会が増えました
江東区・深川で不動産とリノベのお手伝いをさせていただいている株式会社トラストリー代表の柴田です。
このところ、ご相談にいらっしゃる方々の口から「今は控えたほうがいいですよね」「もう少し様子を見ようかなと思っていて」という言葉を聞く機会が増えました。理由をお伺いすると、たいてい世の中に流れる「不動産市況、いよいよ下落」というニュースが頭にあるようです。
たしかにレインズ(東日本不動産流通機構)が公表しているデータを見ると、首都圏の中古マンション市場に変化の兆しが出てきているのは事実です。ただ、その「変化」の中身を正しく理解しないまま、「マスコミがそう言ってるから、今は様子見でいいだろう」と判断してしまうのは、少しもったいないと私は感じています。
実は、「値下がりを待つ」という一見堅実に見える判断にも、見過ごされがちなコストが潜んでいます。今日はそのあたりを、数字を交えて丁寧にお話ししたいと思います。
📝 この記事でわかること
- 首都圏中古マンション「下落」報道の中身と、正しいデータの読み方
- 江東区・深川エリアの実際の価格動向
- 「値下がりを待つ」ことで生じる、金利・家賃・機会損失という3つのリスク
- 「買うべき人」「待っていい人」「賃貸のままでいい人」の見極め方
私たちが日頃大切にしているのは、「今は買い時です」と一律にお伝えすることではありません。お客様お一人おひとりのライフプランやご事情に合わせて、今買わなくていい方には正直にそう伝えますし、当面は賃貸のままで十分という方にはその選択を後押しします。もちろん、今動いたほうがいいタイミングの方には、その理由もきちんとご説明します。マスコミが語る表面的な「上がった・下がった」という情報だけでは、この判断はできません。答えは、人それぞれ違うからです。
今日は、物件購入を煽るわけでも、楽観論を振りまくのでもなく、地域密着でこの仕事を続けてきた立場から、今の市況を数字で丁寧に読み解き、迷っている方がご自身にとっての答えを見つけるお手伝いができるようなお話をしたいと思います。
「首都圏の中古マンション、下落」の中身を見てみる
まず、報道されている「下落」のもとになっているデータを確認しておきましょう。
首都圏の中古マンション成約㎡単価は、2020年5月から実に70か月以上にわたって前年同月を上回り続けてきました。ところが2026年5月度のデータで、73か月ぶりに前年同月を下回り、6月・7月と下落が続いています。直近7月度では、成約件数が前年比8.6%減と4か月連続の減少、成約㎡単価は前年比1.5%減で3か月連続の下落となりました。一方で在庫件数は5か月連続で増加しており、売り物件は増えているのに成約が伸び悩む、という状態が続いています。
数字だけを切り取れば「市場は下落局面に入った」という見出しになるのも無理はありません。ですが、ここで立ち止まって考えていただきたいのは、この数字が「首都圏全体」の平均値だということです。
実際、専門家の分析でも、東京都の成約単価は2026年4月頃から明確に下落方向に転じているものの、これは東京都全体を一括りにした結果であり、都内でもエリアによって動きはまったく異なることが指摘されています。つまり「首都圏が下がった」「東京が下がった」という見出しは、その内側にある地域差を覆い隠してしまっているのです。
では、江東区・深川はどうなのか
私たちが日々向き合っている江東区・深川エリアの実際のデータを見てみましょう。
複数の不動産データベースを見る限り、江東区の中古マンション価格は直近3年間で18〜28%程度上昇しており、これは東京都全体の伸び率を上回るペースです。豊洲・有明といった湾岸エリアの高額取引が牽引役となっている一方、深川エリアでも直近1年の成約価格中央値は前年比で1割以上高い水準を維持しているというデータもあります。
📌 データが示すこと
「首都圏が下落局面」という大きな見出しの裏側で、都心へのアクセスが良く、生活インフラが整った深川のような人気エリアは、依然として底堅い需要に支えられています。「下落」という言葉だけで、このエリアの物件まで一律に「様子見が正解」と考えるのは、データの読み方として少し乱暴です。
もちろん今後も同じペースで上がり続ける保証はどこにもありません。だからこそ、大きな見出しではなく、実際にご自身が検討しているエリア・物件の「生きた情報」を確認することが大切だと考えています。
見出しにならない、もう一つの現実
そして、もう一つ、私が特にお伝えしたいことがあります。それは「マンション価格」という一つの指標だけを見ていては、暮らし全体のコストは判断できないということです。
金利は、これから確実に上がっていく局面にあります。
日本銀行は2025年12月に政策金利を0.5%から0.75%へ、2026年6月にはさらに0.75%から1.0%へと引き上げました。これは約31年ぶりの高水準です。7月の会合では一旦据え置かれましたが、日銀は物価上昇率が今年度後半にかけて2%をはっきり上回ると見ており、金融市場では早ければ9月にも追加利上げがあるとの見方が広がっています。2026年8月時点で住宅ローンの変動金利は年1.082%まで上昇しており、この水準は今後も切り上がっていく可能性が高いというのが、多くの金融機関・研究機関の共通した見立てです。
賃料は、すでに「後追い」ではなく明確に上昇しています。
東京23区のシングル向けマンションの平均募集家賃は、2026年時点で調査開始以来はじめて11万円台に到達し、前年比で1割を超える上昇となりました。ファミリー向けに至っては前年比10%台の上昇という調査結果もあります。「賃貸なら気軽」という時代の感覚は、もう過去のものになりつつあります。
建築費・資材費の高騰も止まっていません。
これは新築供給を抑制し、結果として質の良い中古住宅への需要をさらに押し上げる要因になっています。
これらを合わせて考えると、今起きているのは「不動産価格だけが一方的に下がっている」のではなく、「金利・賃料・物価すべてが同時に動いている」という、より複雑な局面だということがお分かりいただけるかと思います。
値下がりを待つと、実は損をすることがある――3つの理由
ここで、なぜ「値下がりを待つ」という判断が必ずしも有利ではないのか、具体的に3つの視点からご説明します。
理由1:金利上昇が、価格下落分をあっさり打ち消してしまう
たとえば3,500万円を35年ローンで借り入れるケースで試算してみましょう。金利が1.0%であれば総返済額はおよそ4,150万円ですが、これが1.5%に上がると総返済額はおよそ4,501万円になります。わずか0.5%の金利上昇で、返済総額は350万円ほど増える計算です。仮に2.0%まで上がれば、増加額は700万円を超えます。
一方、物件価格が5%下がったとしても、4,000万円の物件であれば下げ幅は200万円ほどにとどまります。金利が0.5〜1%上昇すれば、その下げ幅は簡単に相殺されてしまうのです。「価格が下がるのを待つ」という判断は、金利上昇という要素を加味した瞬間に、想定ほど有利ではなくなるケースがあります。
理由2:待っている間の家賃も、無料ではない
賃貸で様子を見るということは、その間の家賃を払い続けるということでもあります。東京23区の平均募集家賃は前年比で1割を超える上昇が続いています。仮に月15万円の賃貸に2年間住み続け、家賃が年5%ずつ上がったとすると、その2年間だけで数十万円単位の差が生まれます。「待っている間はコストがかからない」というのは、実は思い込みに近いのです。
理由3:条件の良い物件から、先に売れていく
これは数字では表しにくいものですが、日々物件を扱う立場として最も実感する部分です。市況全体が調整局面に入っても、駅近・築浅・日当たりの良い部屋のような人気の高い物件は、真っ先に成約していきます。逆に残っていくのは、条件がやや厳しい物件です。「そのうち値下がりするだろう」と待っている間に、選べる物件そのものが目減りしてしまうことがあります。
この3つを合わせて考えると、「値下がりを待つ」という一見堅実な判断が、金利・家賃・機会損失というかたちで、結果的に負担を大きくしてしまうことがあるのです。
✏️ 著者の所感
「値下がりを待つ」という選択が、金利や賃料の上昇によって結果的に負担を増やしてしまうケースを、何十年もの間に何度も見てきました。だからこそ私は、価格の見出しだけでなく、金利・賃料まで含めた「暮らし全体のコスト」でお話しするようにしています。
もちろん、これは「今すぐ購入すべき」という意味では全くありません。無理な予算組みで購入し、その後の金利上昇に耐えられなくなるようなことは、絶対に避けていただきたいと思います。大切なのは、「なんとなく待てば得」という感覚を一度疑い、ご自身の場合はどうなのかを具体的な数字で確認してみることです。
※上記の試算は簡略化したものです。実際の借入額・返済期間・金利タイプによって数字は変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。
答えは人それぞれ違う。大切なのはマスコミの物差しではなく、ご自身の物差しを
ここまでお伝えしてきたことをまとめると、「首都圏全体の数字」と「今、あなたが検討しているエリア・物件の実情」は必ずしも一致しないということ、そして「価格」だけでなく「金利」「賃料」「暮らし全体のコスト」を合わせて考える必要があるということです。
その上で、あえて申し上げたいのは、これらを踏まえて出す結論は、本来一人ひとり違うはずだということです。
- お子さんの進学や転勤の予定がある方は、無理に今動かず、状況が落ち着くまで賃貸で様子を見たほうがいいこともあります
- 住み替えの予算に余裕があり、深川で長く暮らすビジョンが明確な方には、今この局面だからこそ選べる物件があります
- 収入や働き方がこれから変わる見込みがある方には、金利上昇に耐えられる資金計画を一緒に組み立ててから判断することをお勧めしています
つまり「今は買い時か、待つべきか」という問いに、万人共通の正解はありません。ニュースの見出しは、あくまで首都圏全体を平均した一つの参考情報にすぎず、それをそのままご自身の判断に当てはめる必要はないのです。私たちの役割は、「買ってください」と無理に背中を押すことではなく、それぞれのご事情に照らして、今の市況を正しく理解した上でご自身に合った選択をしていただけるよう、材料をお渡しすることだと考えています。
深川という街で暮らすということ
私がこの仕事を続けてきて感じるのは、深川は「数字だけでは語れない魅力」を持った街だということです。木場公園や清澄庭園のような緑、下町らしい商店街の温かさ、そして都心へのアクセスの良さ。子育て世代にも、これから住み替えを考えるご夫婦にも、選ばれ続けてきた理由がここにあります。
だからこそ、目先の「下落」というニュースワードだけで判断を止めてしまうのではなく、このエリアで実際にどんな物件が、どんな条件で、どんな価格帯で動いているのかという「生きた情報」を知った上で、ご自身にとってのベストなタイミングを見極めていただきたいのです。
よくある質問
Q. 首都圏の中古マンション価格は、本当に下落しているのですか?
A. 2026年5月以降、成約単価が前年同月を下回る月が続いているのは事実です。ただしこれは首都圏全体の平均値であり、江東区・深川など人気の高いエリアでは依然として底堅い動きを見せています。
Q. 江東区・深川エリアの価格はどう推移していますか?
A. 江東区の中古マンション価格は直近3年間で18〜28%程度上昇しており、東京都全体の伸び率を上回るペースが続いています。深川エリアの成約価格も、直近1年で前年比1割以上高い水準を維持しています。
Q. 値下がりを待った方がお得ではないのですか?
A. 必ずしもそうとは言えません。0.5%の金利上昇だけで、35年ローンの総返済額は数百万円単位で増えることがあり、価格の下落幅を上回るケースがあります。加えて、待っている間の家賃上昇や、良い物件から先に売れていく傾向も考慮する必要があります。
Q. 今後、住宅ローン金利はどうなりますか?
A. 日本銀行は2026年6月に政策金利を1.0%へ引き上げ、約31年ぶりの高水準となりました。7月は据え置かれましたが、今後も追加利上げの可能性が指摘されています。
Q. 「今は買い時」ですか? それとも待つべきですか?
A. ご家庭の資金計画やライフプランによって答えは異なります。万人共通の正解はなく、個別にお話をうかがった上での判断をお勧めしています。
迷っているなら、まずは市況の“正しい今”を一緒に確認しませんか
ニュースの見出しと、実際にご自身が検討している物件・エリアの状況は、必ずしも一致しません。私たちは日々レインズの成約データや近隣の売り出し状況を追いかけている立場として、「今、深川で本当に何が起きているのか」を、できるだけ正直にお伝えすることができます。
「今は買い時なのか、それとも待つべきなのか、あるいは賃貸のままでいいのか」
その答えは、ご家庭ごとの資金計画やライフプランによって変わります。だからこそ、一人で悩まず、まずは一度、私たちにお話しいただければと思います。「買ってください」とお勧めすることが目的ではありません。今の市況を正しく理解した上で、ご自身にとって後悔のない選択をしていただくためのお手伝いをさせてください。
著者:柴田 光治
株式会社トラストリー 代表取締役/深川くらし 編集長
不動産・建設業界歴40年超。深川・清澄白河エリアの住まいと暮らしを発信するウェブメディア「深川くらし」編集長として、街と人の物語を発信し続けている。
(参考データ出典:東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」2026年各月度、日本銀行金融政策決定会合、各種不動産市況調査)



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