投資から暮らしへ。2026年・深川で中古マンションを賢く買うための新・方程式|第2話【エリア編】
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前回、「待つこと」にもコストがかかるという話をしました。
でも、こんな疑問が残っている方もいるはずです。
「深川じゃないといけない理由って、何?」
価格が落ち着いてきた今、それは正直な、そして大切な問いだと思います。今回はその答えを、できるだけ具体的にお伝えします。
建物は手を入れれば蘇る。でも立地だけは、お金を積んでも変えられない
不動産の相談を受けるとき、私がいつも最初に伝えることがあります。
「建物は手を入れれば蘇る。でも立地だけは、どんなお金を積んでも変えられない。だから私は、まず立地で選ぶことを一番に伝えています。」
40年この仕事をしていると、バブル崩壊もリーマンショックも、コロナ禍の急騰も見てきました。そのたびに価格は揺れた。でも、深川という立地への需要が消えたことは、一度もありませんでした。
東京駅まで地下鉄で10分圏内、複数路線が使える交通利便性、隅田川と運河に囲まれた水辺の環境。これらは10年前も、今も、変わっていない。そしてこれから先も、変わらない。
価格が上がり続けることへの期待は、正直、今は難しい。でも深川の「立地の価値」は別の話です。それは価格とは関係なく、この街が持ち続けているものです。
清澄白河・門前仲町・木場。それぞれの「代わりのきかない価値」
深川エリアといっても、エリアによって個性があります。私が感じてきた、それぞれの「替えのきかない強さ」をお伝えします。
清澄白河
10年前、この街はまだ静かな下町でした。それが今や、世界中から人が訪れるコーヒーの街になった。古い倉庫がカフェやギャラリーになり、長屋がセレクトショップになっている。
この変化が示しているのは、「文化は一度根付くと、簡単には移動しない」ということです。清澄白河というブランドは、もう確立されました。
門前仲町
東西線・大江戸線の2路線が使え、東京・大手町・新宿・六本木へのアクセスが抜群。それでいて下町の空気が残り、商店街や飲み屋街もある。都会の利便性と人間的な温度感が共存している、実は非常に希少なエリアです。
私が長年見てきた中で、門前仲町の需要が大きく下がったことは一度もありません。
木場・東陽町
子育て世代が選ぶエリアとして、近年確実に注目が高まっています。公園が多く、学校環境が整い、スーパーや病院も充実している。「利便性 × 住みやすさ」のバランスが、深川エリアの中でも特に優れています。
森下
新宿線・大江戸線の2路線が使えるエリアです。清澄白河と市場価格帯はほぼ変わらない水準まで来ています。それでいて、古くからの商店街と下町の生活感が色濃く残っている。「都心に近いのに、ゆったりした時間が流れている」という感覚はむしろ森下のほうが強いかもしれません。清澄白河の洗練された雰囲気より、もう少し地に足のついた暮らしを求める方に選ばれています。
住吉
半蔵門線・新宿線の2路線が使え、渋谷・新宿方面へのアクセスが良いのが特徴です。有楽町線延伸(豊住線)の新駅が設置される予定エリアでもあり、延伸が実現すれば利便性がさらに高まります。落ち着いた住宅街の雰囲気と、子育て環境の良さで、じわじわと注目が集まっています。
街の価値は、再開発が作るのではなく、コミュニティが作る
ここで少し、深川の価値の「本質」に触れたいと思います。
清澄白河がなぜ今の清澄白河になったか、考えたことはありますか。
最初から誰かが設計した街ではありません。地元の小さなロースターやギャラリーが先にあり、その空気を感じ取った人や店が次々と集まってきた。清澄白河というブランドは、そうやって時間をかけて育ってきたものです。
コミュニティが文化を作り、文化が街の価値になる。これは理論ではなく、清澄白河という現実が証明していることです。
そして深川には、もっと長い時間をかけて育ってきた文化があります。
3年に一度の「深川八幡祭り」は、江戸三大祭のひとつです。担ぎ手は地元の住民。沿道で水をかけ合い、街全体が一体になる。あれは観光イベントではありません。何百年も続いてきた、コミュニティそのものの姿です。
清澄白河のカフェ文化も、門前仲町の商店街も、深川八幡祭りも、根っこは同じだと思っています。この街に住む人たちが、時間をかけて積み上げてきたもの。それが深川の空気感を作っている。
一度根付いたコミュニティと文化は、簡単には移動しません。再開発で一夜にして作られたにぎわいは、経済の波に流されることがある。でも、人が時間をかけて育てた文化は、価格が上がっても下がっても、そこに居続ける。
深川の価値の多くは、価格表には載っていません。コミュニティが時間をかけて作ってきた文化と空気感、それがこの街の、一番替えのきかない部分です。
なぜ今、踊り場なのか。深川が底堅い本当の理由
価格が落ち着いてきている背景には、いくつかの理由が考えられます。
金利上昇と物件価格の上昇が続く中で、賃金の伸びがそれに追いついていない。結果として、サラリーマン層が手を出しにくい価格帯の物件が売れにくくなっている。特に高額帯の物件価格が抑えられているのは、そういった構造的な背景があると私は見ています。
一方で深川エリアは、湾岸エリアのように大量の投資マネーが流れ込んできたわけではありません。住みたいから買う、実需の人が中心の市場です。投機的な動きに左右されにくい分、急騰もしないかわりに急落もしにくい。それが深川の底堅さの正体だと思っています。
投資マネーが引いたとき、残るのは「本当に住みたい人」の需要です。深川はずっとその需要に支えられてきた街です。
今、深川の周囲で何が起きているか
「立地の価値」を語るとき、その街単体だけでなく、周囲の変化も重要です。
深川の西側、東京駅周辺、八重洲・日本橋では今、総事業費1兆円規模ともいわれる大規模再開発が同時進行しています。高さ385m・日本一の超高層ビル「TOKYO TORCH(トーチタワー)」は2028年竣工予定。野村グループ、第一三共など大企業の本社移転も相次いでいます。
これが深川にとって何を意味するか。
大手企業の本社が集まれば、そこで働く人たちの住まいの需要が生まれます。東京駅から地下鉄で10分の深川は、その受け皿として最も自然な選択肢のひとつです。
門前仲町・越中島エリアでも、3つの大型再開発プロジェクトが進行中です。街の景色が変わるだけでなく、新しい人の流れと需要が生まれる。詳しくは「門前仲町・越中島の大規模開発完全ガイド」をご覧ください。
有楽町線延伸(豊住線)が変えるもの
もうひとつ、見逃せない動きがあります。
有楽町線の延伸計画、豊洲から住吉を結ぶ「豊住線」です。これが実現すると、江東区の交通利便性は大きく変わります。現在「東西線が混みすぎて不便」という声があるエリアに、新たな移動手段が加わる。
都心近接エリアで「交通利便性が上がる」ことの意味は大きい。それは直接、不動産価値に影響します。詳しくは「有楽町線延伸で大化けする街」の記事でお伝えしています。
「懸念」と向き合う。水害リスクと交通混雑
深川について正直にお伝えするなら、懸念点にも触れなければなりません。
ひとつは水害リスク。荒川が決壊した場合の浸水想定は、確かに無視できません。ただし、国・東京都は江東区のゼロメートル地帯に対して、スーパー堤防整備や排水ポンプの強化を継続的に進めています。また、物件選びの段階でハザードマップを確認し、マンションの階数を考慮することで、リスクはコントロールできます。
もうひとつは東西線の混雑。これは実際に不便を感じている方も多い。ただ、前述の有楽町線延伸が実現すれば、この問題も緩和されます。
懸念を隠すより、きちんと向き合って物件を選ぶ。それが、この街で長く気持ちよく暮らすための正直な方法だと思っています。
結局、深川を選ぶとはどういうことか
価格が上がり続けることへの期待は、確かに以前ほどではありません。
でも私が深川をすすめる理由は、そこではありません。
東京駅まで10分、複数路線、水辺の環境、清澄白河の文化、門前仲町の利便性、子育てしやすい木場・東陽町。そして周囲で進む再開発と、延伸される交通インフラ。
これだけの条件が重なるエリアは、東京の中でそう多くはありません。「住みたいから買う」という動機が、ここでは同時に「資産としても合理的な選択」になる。それが深川の本質的な強みです。
次回・第3話では「プロが教える『買っていい中古』と『ダメな中古』」をお話しします。築年数よりも大切な、管理状態の見極め方を具体的なチェックリストでお伝えします。
▼ このシリーズのロードマップ
第1話【市況編】「うまみ」が落ち着いた今、何を基準に選ぶべきか
第2話【エリア編】← 今ここ
なぜ深川は、価格が落ち着いても価値が揺らがないのか
第3話【選び方編】
プロが教える「買っていい中古」と「ダメな中古」
第4話【資金計画編】
金利上昇時代の「守り」の住宅ローン戦略
第5話【総括編】
「いつ買うか」ではなく「どう暮らしたいか」を主役にしよう
「深川のどのエリアが自分に合うか、一緒に考えてほしい」という方は、お気軽にご相談ください。
売り込みは一切しません。あなたのライフスタイルをお聞きしながら、一緒に考えます。
著者:柴田 光治(深川くらし 編集長 / 株式会社トラストリー 代表)
宅地建物取引士・2級FP技能士。不動産・建設業界歴40年超。深川・江東区エリアを拠点に、住まいと暮らしの専門家として活動。「深川たてもの相談所」を運営し、管理組合運営・大規模修繕工事へのアドバイスも手掛ける。



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