投資から暮らしへ。2026年・深川で中古マンションを賢く買うための新・方程式|第4話【資金計画編】
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物件探しで大切な要素はいくつかありますが、その中でも資金計画は特に重要です。
相談に来られる方の多くは、「なんとなくこのくらいかな」という予算感で物件を探し始めます。でもそのまま物件を見続けても、いざ購入を考えたときに「実は予算オーバーだった」「ローンが思ったより組めなかった」となってしまう。効率が悪いだけでなく、せっかくの縁を逃すことにもなりかねません。
だから私は、物件探しの前にFP相談から進めることをおすすめしています。
自分たちがいくら借りられるか、いくらなら無理なく返せるか。それを先に把握しておくことで、物件探しがぐっとスムーズになります。今日はその「資金計画の考え方」をお伝えします。
「借りられる額」と「返せる額」は、全然違う
住宅ローンの審査では、年収の何倍まで借りられるか、という基準があります。金融機関によって異なりますが、年収の6〜8倍程度まで借りられるケースも珍しくありません。
また最近は、40年・50年ローンを選ぶ方も増えてきました。返済期間を長くすることで月々の返済額を抑えられるため、より高い物件に手が届くように見えます。ただし、返済総額は増え、完済時の年齢も高くなる。退職後もローンが残るケースも出てきます。
でも、数字だけ見て決めると後悔します。
銀行が決める
借りられる額
回収できるかどうかの基準。あなたの暮らしは考慮されない。
自分で判断する
返せる額
教育費・介護・趣味・将来の備えを含めて無理なく返せるか。
銀行が貸してくれる額は、あくまで「回収できるかどうか」の基準です。
だからこそ私は、物件探しと並行して、信頼できるファイナンシャルプランナーへの相談を必ずおすすめしています。
私自身もFPの資格を持っています。でもあえて、お金のプロである第三者のFPに見てもらうことをお願いしています。不動産の担当者とお客様という関係では、どうしても見えにくい部分がある。中立的な立場から家計全体を見てもらうことで、本当に無理のない資金計画が見えてきます。
「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら気持ちよく返せるか」。その答えは、物件ではなくあなたの家計の中にあります。
値上がりが「無理」を吸収していた、その前提が変わりつつある
ここ数年、少し無理をして買った方でも、結果的に助かったケースが多くありました。理由はシンプルで、買った後に価格が大きく上がったからです。
売ろうと思えば買値より高く売れる。その期待が、背伸びした購入の「安全網」になっていた。
でも第1話でお話しした通り、ここ数年のような異常なうまみは落ち着いてきています。値上がりが無理を吸収してくれるという前提は、以前ほど当てにできない局面になってきました。
だからこそ今は、「無理は禁物」という原点に立ち返ることが大切です。
無理して買って、生活が苦しくなる。それは家を手に入れたことで、暮らしの質を失うことです。本末転倒です。
無理は禁物。借りられる額ではなく、無理なく返せる額を知ること。これは今も昔も変わらない、資金計画の原点です。
固定か変動か、正解より「自分たちの戦略」を持つ
住宅ローンの相談で必ず出るのが「固定金利と変動金利、どちらがいいですか?」という問いです。
正直に言うと、これに正解はありません。
ただ、今の深川エリアの購入者を見ていると、変動金利を選ぶ方がまだ多い印象です。理由はふたつあります。
ひとつは、変動金利がまだ固定と比べて低い水準にあること。もうひとつは、10年前後でのリセールを視野に入れている方が多く、長期間のローンリスクをそれほど気にしなくていい、という判断です。
一方で、「金利が上がったら怖い」「返済額が変わらない安心感が欲しい」という方には固定金利が向いています。
大切なのは、どちらが得かという損得計算より、「自分たちはどちらのリスクなら受け入れられるか」という判断です。
変動金利
今は低金利。将来の金利上昇リスクを受け入れられるか、またリセールのタイミングをどう考えるか。
固定金利
返済額が変わらない安心感。変動より高い金利をどう考えるか。
どちらを選ぶにせよ、「なぜそれを選ぶのか」を自分の言葉で説明できる状態で決めてほしいと思っています。
インフレ時代に「借りること」は悪ではない
「できるだけ借金は少ないほうがいい」。そう思っている方は多い。
でも今の時代、その常識を一度疑ってみてください。
借りることは悪ではありません。インフレが続く時代には、借りて手持ちの資金を運用するという考え方が合理的な場面があります。
たとえば、頭金を多く入れて手元資金をゼロにするより、ある程度の頭金を入れて残りを手元に残し、運用や緊急時の備えに使う。住宅ローンの金利より高いリターンが見込める運用ができるなら、手元資金を温存する選択も十分に意味があります。
インフレが進むほど、現金の価値は目減りします。一方、住宅という実物資産の名目価値は維持されやすい。借入残高の実質的な重さも、インフレとともに軽くなっていく。
「頭金をできるだけ多く」という発想は、デフレ時代の常識です。インフレ時代には、お金の使い方の戦略そのものを見直す必要があります。
借りることは悪ではない。インフレの時代に現金を眠らせておくことのほうが、実はリスクになりえます。
忘れがちな「諸費用」と「維持費」の話
資金計画で見落とされやすいのが、物件価格以外のコストです。
購入時には、仲介手数料・登記費用・ローン関連費用・火災保険など、物件価格の6〜7%程度の諸費用がかかります。7,000万円の物件なら、420〜490万円程度です。これをローンに組み込む方法もありますが、できれば手元資金で用意しておくほうが安心です。
また購入後も、毎月の管理費・修繕積立金・固定資産税がかかります。特に修繕積立金は、段階的に上がっていくと思っておいたほうがいい。第3話でお話しした通り、建材コストや人件費の上昇により、将来の修繕費用は増える方向にあります。月々の返済額だけで資金計画を立てると、後で想定外の出費に慌てることになります。
数字より「暮らしの設計」が先
資金計画の話をするとき、私が最後に必ず聞くことがあります。
「10年後、どんな暮らしをしていたいですか?」
子どもが何人いて、どんな学校に行かせたいか。共働きを続けるか、どちらかが働き方を変える可能性はあるか。親の介護はどう考えているか。
住宅ローンは35年という長い時間をかけて返すものです。その間に、人生は必ず変わります。だからこそ、今の収入だけで計算するのではなく、これからの暮らしの変化を想定した上で「無理なく返せるか」を考えてほしい。
数字は後からついてきます。まず「どう暮らしたいか」を決める。それが資金計画の本当の出発点です。
次回・最終話では「いつ買うか」ではなく「どう暮らしたいか」を主役にした、このシリーズの総括をお伝えします。
▼ このシリーズのロードマップ
第1話【市況編】「うまみ」が落ち着いた今、何を基準に選ぶべきか
第2話【エリア編】なぜ深川は、価格が落ち着いても価値が揺らがないのか
第3話【選び方編】プロが現場で見ていること。「買っていい中古」と「ダメな中古」の分かれ目
第4話【資金計画編】← 今ここ
「いくら借りられるか」より「いくらなら気持ちよく返せるか」
第5話【総括編】「いつ買うか」ではなく「どう暮らしたいか」を主役にしよう
「自分たちの場合、いくらが適正なのか一緒に考えてほしい」という方はお気軽にご相談ください。
ローンの組み方から資金計画全体まで、売り込みなしで一緒に考えます。
著者:柴田 光治(深川くらし 編集長 / 株式会社トラストリー 代表)
宅地建物取引士・2級FP技能士。不動産・建設業界歴40年超。深川・江東区エリアを拠点に、住まいと暮らしの専門家として活動。「深川たてもの相談所」を運営し、管理組合運営・大規模修繕工事へのアドバイスも手掛ける。



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