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コラム

「うちのマンション」は大丈夫? 大規模修繕工事「38社談合」、マンション住民への影響と今すぐできる対策

「大規模修繕って、いつの間にか終わってた」
「理事会に任せきりで、費用のことはよくわからない」
そんな声は、私たちの暮らす、江東区エリアでもよく聞きます。

ところが、その「任せきり」を狙い撃ちにするような不正が、業界全体で組織的に行われていたことが、2026年6月11日、公正取引委員会によって正式に認定されました。

長谷工リフォームや大京穴吹建設、清水建設の子会社など、誰もが聞いたことのある大手の名前が並ぶ今回の摘発。「うちのマンションは大丈夫だったのか」と感じた方も多いのではないでしょうか。この問題を深川くらし編集部では、江東区エリアに住む目線で整理してみます。

この記事のポイント
1 38社に排除措置命令へ ── 課徴金総額は約16億円
2 「相見積もりを取った」のに出来レースだった手口
3 なぜ9年間、誰も気づかなかったのか
4 深川・江東区のマンションへの影響
5 専門家でなくてもできる、6つの確認

38社に排除措置命令へ ── 課徴金総額は約16億円

公正取引委員会は、関東のマンション大規模修繕工事をめぐる談合を独占禁止法違反(不当な取引制限)と認定しました。施工会社36社と設計コンサルタント2社、合計38社に排除措置命令を出す方針で、課徴金は総額約16億円。談合が認定された工事件数は100件を超えます(毎日新聞・時事通信、2026年6月11〜12日報道)。

今回の摘発、3つの数字
38社
排除措置命令対象
施工36社+コンサル2社
約16億円
課徴金総額(予定)
過去最大級の規模
100件超
談合対象の工事件数
長期・組織的に実施

排除命令を受ける主な顔ぶれは、施工会社として長谷工リフォーム(長谷工グループ)、シミズ・ビルライフケア(清水建設子会社)、SMCR、大京穴吹建設(大京グループ)など36社。設計コンサルタントは翔設計(東京・渋谷区)とリノシスコーポレーション(大阪市)の2社です。

驚くのは数字だけではありません。国土交通省がこの問題に警告を発したのは2017年のこと。
それから9年間、業界は変わりませんでした。
昨今の建築資材の高騰や人手不足を背景に修繕費が上昇し続けるなか、コンサルも巻き込んだ受注調整が価格競争を長年にわたって妨げてきたのです。


「相見積もりを取った」のに、出来レースだった

管理組合が「ちゃんと複数社から見積もりを取った」と思っていても、裏側ではすでに話がついていた。
それがこの談合の巧妙なところです。

施工会社どうしがあらかじめ「今回はA社が受注する」と申し合わせ、他社は意図的に高い見積もりを出して引き立て役を演じます。管理組合の目には「競争が行われた」ように映りますが、実態は茶番でしかありませんでした。

その結果、工事費は相場より15〜20%水増しされるとも言われています。1棟あたり数千万〜数億円規模になる大規模修繕工事では、その差額が数百万〜数千万円にのぼることもあります。そのすべてが、住民が何十年もかけて積み上げてきた修繕積立金から支払われていたのです。

さらに今回の核心は、設計コンサルタントの関与です。

翔設計とリノシスコーポレーションのコンサルタント会社2社は、「中立の専門家」として管理組合の業者選定を支援するはずが、施工会社と結託して受注調整に加担していたとされます。コンサルタント費用が相場(工事費の5〜10%程度)より異常に安い場合、その安さの裏に施工会社からのバックマージンが隠れているケースがあります。

「まるで詐欺」──あるマンション設備業者が告白した「やらせ見積もり」の実態。管理組合を守るはずの設計コンサルが、住民の知らないところで施工会社と利益を分け合っていました。


なぜ9年間、誰も気づかなかったのか

業界の専門家からは「マンション修繕の入札談合は昔から存在し、業界内では暗黙の了解だった」という声が聞かれます。問題の根は、住民と専門業者のあいだに横たわる深い「情報格差」にあります。

管理組合の理事は、ほとんどの場合、区分所有者によるボランティアです。任期は2年程度で交代し、大規模修繕を経験したことのない理事がほとんど。工事費の相場も、仕様の妥当性も判断できないまま、億単位の発注をしなければなりません。「プロを信頼するしかない」という構造が、不正を何十年も見えにくくしてきました。

「修繕積立金は老後のための備えだと思って、ずっと払い続けてきました。それが知らないうちに余計に取られていたとしたら、本当に怖い話です。うちのマンションは大丈夫だったのか、今すぐ確認したくなりました」
── 清澄白河在住・40代・マンション区分所有者


深川・江東区のマンションへの影響

江東区は、都内で分譲マンションのストック戸数がトップクラスのエリアです。門前仲町・木場・清澄白河・東陽町周辺の深川エリアには1980年代から建ち始めたマンションが数多く、今や築20〜40年を迎える物件が目立ちます。第2回・第3回の大規模修繕が視野に入る時期で、修繕積立金の総額が数千万〜数億円規模になる物件も珍しくありません。

今回の排除命令対象38社の中に、深川エリアや江東区の工事を請け負った実績を持つ会社が含まれる可能性は十分にあります。水辺の景色が美しいあのマンションも、運河沿いの大規模タワーも、例外ではないのです。


専門家でなくてもできる、6つの確認

過去に今回の38社が関わった修繕工事に心当たりがある場合は、積立金の使途を今一度確認してみましょう。そして次の工事に向けて、以下のポイントを管理組合で共有しておくだけでかなり変わります。

積立金を守る6つのチェックリスト
1 コンサルタントは、自分たちで独自に探したか
管理会社の「おすすめ」に頼りきりは要注意。今回も管理会社の紹介ルートが問題の温床になりました。
2 コンサルタント費用は工事費の5〜10%の範囲内か
極端に安い場合、施工会社からのバックマージンが疑われるサインです。
3 見積もりは「金額」だけでなく「工事仕様」まで比較したか
数字だけ見ていると、過剰工事や仕様の水増しに気づけません。
4 利害関係のない第三者のチェックを受けたか
マンション管理士・一級建築士へのセカンドオピニオンが最も有効な手段です。
5 業者選定の経緯を住民全員に説明しているか
議事録の作成と住民総会での報告が、不正の最大の抑止力になります。
6 工事契約に「談合違約金特約条項」を入れたか
国土交通省が2025年6月に強く推奨。国の直轄工事では既に導入されている仕組みです。

江東区には「マンション計画修繕調査費助成制度」があり、建物診断費用の一部を区が補助しています。何から始めればいいかわからない場合は、区の住宅課への相談が最初の一歩としておすすめです。


編集後記

豊かな暮らしを守るために、建物を守るお金は正しく使われなければなりません。今回の公取委の動きが、深川に暮らす私たちにとって、自分のマンションを一度立ち止まって見つめ直す機会になれば──
深川くらし編集部はそう願っています。

参考:毎日新聞・時事通信(2026年6月11〜12日)/日本経済新聞(2026年6月11日)/国土交通省(2025年6月事務連絡・2017年通知)/江東区マンション計画修繕調査支援要綱
本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。個別の企業・物件への評価を意図するものではありません。



よくある質問

Q. 今回の談合問題で処分される会社はどこですか?

長谷工リフォーム、シミズ・ビルライフケア(清水建設子会社)、大京穴吹建設など施工会社36社と、設計コンサルタントの翔設計・リノシスコーポレーション2社、合計38社が排除措置命令の対象です。課徴金総額は約16億円の見通しです。

Q. 深川・江東区のマンション住民はどうすればいいですか?

まずコンサルタントを管理会社の紹介に頼らず自分たちで選ぶこと、見積もりを金額だけでなく工事仕様まで比較すること、そして工事契約に「談合違約金特約条項」を盛り込むことが有効です。江東区には建物診断費用の助成制度もありますので、区の住宅課への相談もおすすめします。

Q. 修繕積立金が本当に水増し請求されていたか確認できますか?

過去の工事に今回の38社が関わっていた場合、工事費の内訳書・設計図書・議事録を管理組合に請求して確認できます。不審な点があればマンション管理士や弁護士への相談が有効です。

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