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コラム

【続編】日本橋・八重洲再開発の最新状況|ミッドタウン日本橋竣工と建築費高騰、深川への影響

この記事の情報は2026年10月25日時点のものです。

日本橋・八重洲の再開発は、2026年に「計画」から「完成」の段階に入りました。TOFROM YAESUが9月に開業し、東京ミッドタウン日本橋が9月30日に竣工。一方で、建築費の高騰による大幅な遅れも表れ始めています。

2026年2月、深川くらしでは「日本橋・八重洲の大規模再開発が波及。不動産のプロが「深川」の資産価値を確信する根拠とは」をお届けしました。それから8か月。永代橋を渡った向こう側では、計画図でしか見られなかった建物が、実際に開業し、竣工し始めています。

▶ 前回の記事:日本橋・八重洲の大規模再開発が波及。不動産のプロが「深川」の資産価値を確信する根拠とは

この記事では、事業者の発表と報道をもとに、主なプロジェクトの「いま」を整理します。そのうえで、2月に書いた見立てがいまも変わらないのか、深川に暮らす人たちの目線で確かめます。

この8か月の動き(要点)

  • 完成: TOFROM YAESU(地上51階・約250m)が2026年9月10日に開業。東京ミッドタウン日本橋(地上52階・約284m)が9月30日に竣工し、2027年内にグランドオープン予定。
  • 建設中: 高さ日本一となるTorch Tower(385m)は、2026年8月時点で32階付近まで鉄骨が到達。2028年度の竣工を目指す。
  • 遅れ: 日本橋一丁目東地区は、総事業費が約2,942億円から約5,089億円に膨らみ、竣工が約3年後ろ倒しに。
  • 首都高地下化: 地下ルート完成は2035年度、高架の撤去完了は2040年度の予定のまま。

ひと目で見る、再開発のいま

完成したのは、まだ最初の2つ。日本橋の大半の街区は2030年代に完成し、首都高の高架がなくなるのは2040年度の予定です。

プロジェクトごとの現在地

八重洲:東京駅前に「完成」が並び始めた

TOFROM YAESU(八重洲一丁目東地区) — 2026年9月10日開業

東京建物が進めた東京駅直結の複合タワーです。タワーは地上51階・地下4階、高さ約250m、延床面積約22.5万㎡。2026年2月28日に竣工し、隣の「TOFROM YAESU THE FRONT」(地上10階)も7月に完成しました。

  • 商業ゾーン68店舗(うち55店舗が9月10日に開業、残りは冬以降)
  • 約800席の劇場「東京建物 Pia シアター」、カンファレンス施設、健診施設、住宅
  • オフィスは9〜50階。地下の「バスターミナル東京八重洲」も拡張が進む

YAESU CORE(八重洲二丁目中地区) — 2029年1月末竣工予定

2026年8月に施設名称が決まりました。地上43階・高さ約227m、延床約38.9万㎡。約1,300席の劇場、約50店舗の商業、サービスアパートメントが入り、バスターミナルの最終期もここで完成する予定です。完成すれば、東京八重洲のバスターミナルは乗降用20バース・約2.1万㎡と、国内最大級になります。

八重洲一丁目北地区 — 南街区2029年度、北街区2032年度竣工予定

日本橋川に面した地区で2024年11月に着工。南街区は地上44階のオフィス中心のタワーで、ホテルも入ります。北街区は川沿いの低層の商業施設で、日本橋駅と東京駅を結ぶ地下通路も計画されています。

三井不動産株式会社ホームページより抜粋

日本橋:「日本橋リバーウォーク」の第1弾が完成

東京ミッドタウン日本橋(日本橋一丁目中地区) — 2026年9月30日竣工、2027年内グランドオープン予定

三井不動産と野村不動産による、日本橋川沿いの再開発「日本橋リバーウォーク」の第1弾です。中心となるタワーは地上52階・高さ約284m、延床約37.5万㎡。

  • オフィス:野村ホールディングスと第一三共の本社、バンク・オブ・アメリカの日本拠点が入居予定
  • ホテル:ウォルドーフ・アストリア東京日本橋(197室)、最上部にレジデンス71戸
  • 商業約2万㎡・約100区画、MICE施設、日本橋川沿いの住宅・商業棟
  • 日本橋駅に直結。「コレド日本橋」は10月15日で閉館し、2027年内に一体で再開業

その先の街区も、次のような予定で続きます。

  • 日本橋一丁目1・2番地区:A・B街区2031年度、C・D街区2034年度(2024年10月に組合設立)
  • 日本橋室町一丁目地区:A街区2031年度、B街区2033年度、C・D街区2034年度以降
  • 日本橋一丁目東地区:大幅に遅れる見通し(次の章で詳しく)

常盤橋:高さ日本一のタワーが伸びている

Torch Tower(TOKYO TORCH) — 2028年度竣工予定

三菱地所が東京駅日本橋口の北側で建設中の、地上62階・高さ385mのタワーです。完成すれば日本で最も高いビルになります。2026年8月時点で鉄骨は32階付近まで上がり、1週間に約2フロアのペースで高くなっています。深川から見ても、隅田川の向こうに大きくそびえる、新しい東京の目印になるでしょう。

首都高の地下化と、KK線のその後

日本橋の上を覆う首都高の地下化は、予定どおり進んでいます。延長約1.8km、概算事業費は約3,200億円。2025年4月から八重洲線の長期通行止めが始まり、工事は第2段階に入っています。地下ルートの完成は2035年度、高架の撤去完了は2040年度の予定です。

[画像:資料の切り抜き候補|首都高速道路「未来の日本橋」にある高架撤去前後のイメージ(https://www.shutoko.jp/ss/nihonbashi-tikaka/future/)。掲載前に首都高速道路株式会社へ使用可否を確認。代わりの案:柴田撮影の、首都高の下にある日本橋の写真]

銀座を通る旧東京高速道路(KK線)は、歩行者のための空中回廊「Tokyo Sky Corridor」に生まれ変わる計画です。2026年はその上でイベントも開かれ、少しずつ人が歩く場所になり始めています。

光だけではない|建築費高騰が生んだ「3年の遅れ」

この8か月で最も大きなニュースは、実は「完成」よりも「遅れ」のほうかもしれません。

日本橋川沿いの「日本橋一丁目東地区」の再開発では、2026年5月に事業計画の変更案が示されました。その中身は次のとおりです。

項目 当初(2024年4月認可) 変更案(2026年5月)
総事業費 約2,942億円 約5,089億円(約73%増)
うち工事費 約1,980億円 約3,678億円(約86%増)
A街区の建築工事着手 2026年10月 2029年4月
A街区の竣工 2032年1月 2034年11月
B街区の竣工 2032年3月 2035年3月

増えた約2,146億円のほぼすべては、参加組合員(東急不動産・三井不動産・日鉄興和不動産)の負担でまかなう計画です。補助金は277億円のまま変わっていません。建物の規模も、A街区は約6,000㎡、B街区は地上51階から50階へと、わずかに縮小されています。

日本橋のような日本屈指の一等地でも、工事費が2年で約1.9倍になれば、計画を後ろにずらさざるを得ない。これは、深川を含む東京中の再開発に共通する現実です。門前仲町駅前の計画や、越中島のヤマタネの開発を見るときにも、忘れてはいけない点です。

一方で、TOFROM YAESUや東京ミッドタウン日本橋のように、すでに工事が進んでいた計画は予定どおり完成しています。「どの段階で建築費高騰を迎えたか」が、各計画の運命を分けているように見えます。

出典:建設通信新聞(2026年5月12日)、futurethinks(note、2026年5月)

日本橋は、歴史を受け継げるか

「高さ日本一」「国内最大級」。日本橋・八重洲の再開発を伝える言葉は、どうしても未来の側に寄りがちです。けれど、この街を愛する人たちが本当に気にかけているのは、「日本橋が日本橋のままでいられるか」ではないでしょうか。公表されている資料から、その手がかりを探してみます。

計画の出発点に「歴史」が書かれている

首都高の地下化は、2017年7月に国土交通省と東京都が検討を始めると発表したものです。その目的には、「国際金融都市にふさわしい品格のある都市景観の形成」と並んで、「歴史や文化を踏まえた日本橋の顔づくり」が掲げられています。

東京都が2025年7月にまとめた「日本橋川周辺のにぎわい創出に向けた基本方針」も、将来像を「歴史と未来に出会える、日本橋川」としました。沿川で培われた江戸東京文化を生かすとし、2026年4月には具体的な取り組みをまとめた実施方針も出ています。川沿いのエリアの愛称公募(2026年4〜5月)では、都が示した3案のうち2案が、江戸の「粋」を名前に織り込んでいました。

事業者の側も同じです。2026年10月8日に竣工を発表した東京ミッドタウン日本橋は、江戸の頃から水運の中心で、人々の暮らしの中心だった日本橋川に目を向け、「水辺に開かれ、川とともに時を重ねる街」を掲げました。ロゴにも、川の流れを表す水色が加えられています。

実際に残されたもの

  • 東京ミッドタウン日本橋では、1930年に完成した「日本橋野村ビルディング旧館」(中央区指定有形文化財)を残します。野村證券の本社ビルとして歩んできた建物で、外壁と1階を壊さずにそのまま残す工事が進められています。低層部は商業施設として生まれ変わる予定です。
  • 新しい建物の低層部は、A街区が地上4階・約33m、B街区が地上7階・約32m。284mのタワーとは別に、通りや川沿いには4〜7階建ての建物が並びます。
  • 日本橋室町一丁目地区の計画素案では、薬問屋が多かった町の歴史に配慮した広場をつくり、川沿いに通路幅2m・植栽約3mの遊歩道を設けるとしています。
  • それ以前から続く三井不動産の「日本橋再生計画」(テーマは「残しながら、蘇らせながら、創っていく」)では、2014年に福徳神社が再建され、2016年に広場「福徳の森」が生まれました。
  • 1911年に完成した石造りの日本橋、三井本館、日本橋三越本店、髙島屋日本橋店は、いずれも国の重要文化財として、いまも使われ続けています。

    三井不動産株式会社ホームページより抜粋

それでも、確かめ続けたいこと

資料を読むと、注意しておきたい点も見えてきます。

一つは、街並みのルールの多くを事業者が担っていることです。中央区は景観法に基づく「景観行政団体」ではありません。日本橋川沿いの「街並み景観ガイドライン」も、三井不動産が代表を務める協議会がつくったもので、公開されている概要には、高さや色といった細かい基準までは載っていません。

もう一つは、残し方です。歴史的な建物は、外観を保存して中を新しくする形が中心です。建物の「顔」は残っても、そこで営まれてきた商いや人のつながりまで残るとは限りません。

首都高をなくすこと自体にも、異論を唱える方もいるようです。宗教社会学者の岡本亮輔氏は、首都高こそ東京の風景に欠かせないのではないかと問いかけました(プレジデントオンライン、2017年)。何を「日本橋らしさ」と感じるかは、人によって違うのかもしれませんが、橋の上の空が開ける景観は賛成です。

門前仲町への問いかけ

日本橋の資料から見えてくるのは、歴史は「大切にします」と書くだけでは残らない、ということです。文化財として守る。低層部の高さを街並みに合わせる。神社や広場の場所を、計画の中にあらかじめ確保する。そうした具体的な仕組みがあってこそ、はじめて受け継がれていきます。

門前仲町駅前の再開発でも、同じことが問われています。区が公表した計画概要には、「門前町をイメージした低層部」という言葉があります。富岡八幡宮や深川不動堂へ続く参道の空気、祭りの日の人の流れ、商店街の店の並び。その言葉が、建物の形や使い方としてどう実現されるのか。日本橋で起きていることは、そのまま深川で確かめるべきことでもあります。

▶ 門前仲町駅前の計画を、公表資料から詳しく読み解いた記事はこちら
その再開発は、門前仲町らしさを残せるか|地上33階建て144mのタワー計画と、建築費高騰の壁

深川への波及|2月の見立てを確かめる

結論から言えば、「日本橋・八重洲の変化が、橋を渡った深川の価値を支える」という方向性は、この8か月でむしろはっきりしました。ただし、その速さと形は、2月の時点より少し複雑になっています。

2月の記事の予定は、いまどうなったか

プロジェクト 2月の記事での予定 いま(2026年10月)
東京ミッドタウン日本橋(日本橋一丁目中地区) 2026年3月竣工予定 2026年9月30日に竣工。2027年内にグランドオープン予定
TOFROM YAESU 2026年7月竣工予定 タワーは2月28日、THE FRONTは7月に完成。9月10日に開業
Torch Tower 2028年3月竣工予定 2028年度の竣工予定と報じられ、当初よりやや後ろへ
日本橋一丁目東地区(A・B街区) 2031年度竣工予定 変更案でA街区2034年11月、B街区2035年3月へ
首都高の地下化 地下ルート2035年度、高架撤去2040年度 予定どおり

完成したもの、少しずれたもの、大きく遅れたもの。わずか8か月でも、再開発の「予定」はこれだけ動きます。そのうえで、2月に書いた見立ての中身を確かめます。

変わらなかったこと:「働く場所」が川の向こうに集まる

完成した2つのタワーだけでも、大量のオフィスが生まれています。TOFROM YAESUは9〜50階がオフィス。東京ミッドタウン日本橋には、野村ホールディングスや第一三共といった大企業の本社が移ってきます。一方で、このエリアの住宅はごくわずかです。東京ミッドタウン日本橋のレジデンスは71戸、川沿いの住宅棟は48戸にとどまります。

働く場所は日本橋・八重洲に集まり、住む場所は足りない。その「住む場所」の有力な候補になるのが、東西線で茅場町まで1駅、日本橋まで2駅、永代橋を歩いても渡れる門前仲町であり、深川のエリアです。

江戸の頃から続く「川の向こうとこちら」

日本橋と深川のこうした関係は、実は江戸の頃からありました。

江戸の日本橋は五街道の起点で、魚河岸や大店が集まる下町の中心でした。一方の深川は、川を生かして木材や倉庫、米や油の問屋の町として栄えます。明暦の大火(1657年)のあと、幕府は永代島に貯木場を集めて木場を設け、1701年(元禄14年)にいまの木場の地へ移しました。「商いの中心は日本橋、それを支える場所は川の向こうの深川」という役割分担は、300年以上前から続いているのです。

暮らし方にも、似た話があります。松尾芭蕉は1680年(延宝8年)、日本橋から深川へ移り住みました。にぎやかな中心から川を渡り、落ち着いた深川で暮らす。340年以上前にも、そんな選び方をした人がいたのです。

ただし、江戸の深川は「支える側」だけの町ではありませんでした。社寺の祭りや開帳を中心に、江戸の人たちが遊びに来る場所としてにぎわいました。1698年に架けられた永代橋は、1807年、富岡八幡宮の祭りに押し寄せた人の重みで崩れ落ち、死傷者・行方不明者は1,400人以上にのぼったとされています。それほど多くの人が、川の向こうから深川を目指していたのです。

働く場所を支えるだけでなく、人が訪れたくなる町でもあること。それが、江戸から続く深川の姿です。

「出典:国立国会図書館デジタルコレクション」

変わったこと:「一方向に上がり続ける」時代ではなくなった

一方で、住宅市場の空気は変わり始めています。東京23区の中古マンションの平均価格(東京カンテイ調べ)は、2026年8月まで3カ月連続で下落しました。湾岸の高額物件では、売り出し在庫の増加も報じられています。

また、日本橋一丁目東地区のように大きく遅れる計画も出てきました。「再開発が完成すれば、深川の価格もすぐに上がる」という単純な話ではなくなっています。

いまの見立て

  • 方向性: 変わらない。川の向こうに仕事とにぎわいが集まるほど、「歩いて、あるいは数分で通える住宅地」としての深川の存在感は増す。
  • 速さ: 市況次第。価格が一方向に上がり続ける前提で判断するのは危うい。
  • 形: 深川の価値は、「高層ビルの近く」ではなく、「都心に近いのに下町の空気が残る」ことにある。日本橋が高級なビジネス街になるほど、その対比は際立ちます。

だからこそ、門前仲町駅前の再開発で問われている「下町の空気を残せるか」という問いは、深川全体の価値にもつながっているのです。

暮らしの目線で見る|近くなること、気をつけたいこと

再開発のニュースは、高さや事業費といった大きな数字で語られがちです。ここでは、深川で毎日を暮らす人の目線で、何が身近に変わるのかを考えてみます。

[画像:オリジナル図 fukagawa-nihonbashi-access.png|深川から見た日本橋・八重洲(模式図)]

近くなること

  • 旅の出発点: 東京駅前の「バスターミナル東京八重洲」は、2026年3月20日にTOFROM YAESUの中に第2期エリアが開業しました。2029年中に全体が開業する見通しで、完成すれば乗降用20バースを持つ国内最大級の高速バスターミナルになります。帰省や旅行の出発点が、深川から気軽に向かえる場所にそろいます。
  • 舞台や文化: TOFROM YAESUには約800席の劇場「東京建物 Pia シアター」が入り、2029年1月末に完成予定のYAESU COREにも約1,300席の劇場ができます。銀座や日比谷まで出なくても、橋の向こうで舞台を楽しめるようになります。
  • 買い物と食事: 東京ミッドタウン日本橋は2027年内にグランドオープンの予定で、約2万㎡の商業ゾーンが生まれます。閉館したコレド日本橋も、その一部として生まれ変わります。
  • 水辺の散歩道: 日本橋川沿いでは、再開発に合わせて川に面した遊歩道や広場が整えられていきます。日本橋川は、永代橋のすぐ上流で隅田川に注ぐ川です。2040年度に首都高の高架がなくなれば、永代橋から日本橋川をさかのぼり、空の戻った日本橋まで歩く散歩が、深川に暮らす人ならではの楽しみになるかもしれません。

気をつけたいこと

  • 朝の東西線: 国土交通省の調査(2024年度)で、東西線の最も混む区間は木場→門前仲町。朝7時50分からの1時間の混雑率は150%で、前年度の148%から上がりました。日本橋や大手町の方向に大きなオフィスが増える中で、深川から乗る人にとっては身近な問題です。2月の記事でも触れたように、有楽町線の延伸(豊洲〜住吉、2030年代半ばの開業を目標)が実現すれば、木場→門前仲町の混雑率は約20%下がると見込まれています。ただ、それまでにはまだ時間があります。
  • 車での移動: 首都高八重洲線は、2025年4月5日から2035年度まで、神田橋JCT〜西銀座JCTが通行止めです。八重洲出入口と丸の内出口も使えません。車で東京駅や銀座の方へ向かうときは、しばらくルートの工夫が必要です。
  • 長く続く工事: 日本橋の各街区の完成は2030年代、首都高の高架撤去は2040年度の予定です。橋の向こうでは、これからも長く工事が続きます。
  • 暮らしのコスト: 日本橋・八重洲に生まれる住宅は、オフィスの規模に比べてごくわずかです。「働く場所の近くに住みたい」人が深川に目を向ければ、家賃や住宅価格に影響が及ぶ可能性もあります。いま住んでいる人にとっては、喜ばしいことばかりとは限りません。

毎日の暮らしは、橋のこちら側にある

とはいえ、日本橋に大きな商業施設ができても、毎日の夕飯の買い物をするのは近所の商店街やスーパーでしょう。顔なじみの店、祭りで声をかけ合う近所の人。暮らしの手ざわりは、相変わらず橋のこちら側にあります。

川の向こうが「特別な日に出かける場所」として充実していくほど、深川は「毎日を過ごす場所」としての良さが問われていきます。その良さを手放さないことが、深川で暮らす人たちにとって一番の備えなのかもしれません。門前仲町の駅前でいま進む計画も、まさにその「毎日の場所」をどう変えるかという話です。

▶ あわせて読みたい:門前仲町駅前の再開発、都市計画の手続きはこれから。意見を届けられる時期も解説しています

これからの注目ポイント

これからの数年で、深川から見ても変化を実感しやすいのは次の出来事です。

  1. 2026年冬以降: TOFROM YAESUの残りの店舗が開業
  2. 2027年内: 東京ミッドタウン日本橋がグランドオープン。コレド日本橋も一体として再開業
  3. 2028年度: Torch Tower竣工。最上部には展望施設も計画されている
  4. 2029年1月末: YAESU CORE竣工。バスターミナル東京八重洲が全面完成へ
  5. 2029年度: 八重洲一丁目北地区の南街区竣工

その先は、2031年度以降に日本橋の各街区が順に完成し、2035年度に首都高の地下ルートが開通、2040年度に日本橋の上の高架がなくなります。ここから先は、14年がかりの大仕事です。

ここに挙げた時期は、いずれも事業者や報道が伝える「予定」です。日本橋一丁目東地区のように、建築費次第で大きく変わることもあります。

まとめ|川の向こうが完成していくいま、深川に問われること

2026年は、日本橋・八重洲の再開発が「計画」から「完成」へ移った年でした。東京駅前には新しい劇場やバスターミナルが生まれ、日本橋川沿いでは水辺の街づくりが始まりました。

その一方で、建築費の高騰は、日本橋のような一等地にさえ「3年の遅れ」をもたらしました。再開発は、もはや「約束された未来」ではなく、一つひとつ確かめていくものになりました。

永代橋の向こうに高層ビルが並ぶほど、橋のこちら側に残る低い家並みや商店街の価値は、かえって高まっていくのかもしれません。都心のすぐ隣で、下町として暮らせること。それをどう守り、育てていくかが、これからの深川に問われています。

深川くらしの再開発コラムをあわせて読む

おわりに|深川くらし編集長・柴田より

2月に記事を書いたときは、まだ計画図と完成予想図で語るしかなかった建物が、いま実際に東京駅の前に立ち、人が集まり始めています。8か月で街はここまで変わるのかと、正直驚いています。

同時に、日本橋一丁目東地区のような大幅な遅れを見ると、再開発を「必ず完成するもの」として語ることは、もうできないと感じます。これからも、完成したもの、遅れているものを継続してお伝えしていきます。

柴田 光治(深川くらし 編集長)

よくある質問

Q. 東京ミッドタウン日本橋はいつオープンしますか? A. 2026年9月30日に竣工し、グランドオープンは2027年内の予定です。地上52階・高さ約284mのタワーに、オフィス、ウォルドーフ・アストリア東京日本橋、レジデンス、商業、MICE施設が入ります。

Q. TOFROM YAESUはいつ開業しましたか? A. 2026年9月10日に開業しました。タワーは地上51階・高さ約250mで、東京駅に直結しています。商業ゾーンの68店舗のうち、残りの店舗は2026年冬以降に開業します。

Q. 高さ日本一のTorch Towerはいつ完成しますか? A. 2028年度の竣工予定です。地上62階・高さ385mで、2026年8月時点で鉄骨は32階付近まで到達しています。

Q. 日本橋の首都高はいつなくなりますか? A. 地下ルートの完成が2035年度、日本橋の上の高架の撤去完了が2040年度の予定です。

Q. 建築費の高騰で、日本橋の再開発に遅れは出ていますか? A. 出ています。日本橋一丁目東地区では、2026年5月の事業計画変更案で、総事業費が約2,942億円から約5,089億円に増え、A街区の竣工が2032年1月から2034年11月に、B街区が2032年3月から2035年3月に延びる見通しです。

Q. 日本橋・八重洲の再開発は、深川にどう影響しますか? A. 日本橋・八重洲には大企業の本社や大規模オフィスが集まる一方、住宅はごくわずかです。東西線で数分、永代橋を歩いても渡れる深川は、職住近接の住宅地としての存在感が増すと考えられます。ただし、住宅価格は市況次第で、一方向に上がり続けるとは限りません。

Q. 深川から日本橋・八重洲へはどう行けますか? A. 東京メトロ東西線で、門前仲町駅から茅場町駅まで1駅、日本橋駅まで2駅です。東京ミッドタウン日本橋は日本橋駅に直結します。隅田川に架かる永代橋を渡って歩いて向かうこともできます。

Q. 日本橋の再開発で、歴史的な建物は残りますか? A. 1911年に完成した日本橋、三井本館、日本橋三越本店、髙島屋日本橋店は、国の重要文化財として残っています。東京ミッドタウン日本橋では、1930年に完成した日本橋野村ビルディング旧館(中央区指定有形文化財)の外壁と1階を残し、低層部を商業施設として生かします。

Q. 日本橋と深川は、江戸時代にはどんな関係でしたか? A. 日本橋は五街道の起点で、魚河岸や大店が集まる商いの中心でした。深川は木場や倉庫、米や油の問屋で江戸を支えるとともに、富岡八幡宮の祭りなどで江戸の人が遊びに訪れる町でもありました。1698年に架けられた永代橋が、両岸を結んでいました。

出典

歴史・暮らしの章の出典

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