「今って、買い時ですか?」
深川くらしに相談に来るお客様から、最もよく聞かれる質問のひとつです。これほど答えるのが難しい質問はなかなかありません。でも、だからこそ現場にいる私たちが、包み隠さずお伝えすべきことだと考えています。
2026年春の深川エリア、そして東京の不動産市況について、データと現場の肌感覚、両方からお伝えします。
価格が下がる材料が、今のところ見当たらない。
東京の中古マンション市場、今どうなっているか
まず、数字から整理します。
2025年の首都圏中古マンション価格は前年比+22.1%と急騰し、東京都区部ではさらに高い水準を記録しました。一方で、強気な価格設定の販売が目立つようになり、都心部では成約価格が横ばいで推移する局面も出てきています。
新築マンションの供給はさらに厳しく、2024年度の首都圏新築マンションの発売戸数は1973年以降で過去最少となり、1戸あたりの平均価格は過去最高を更新しています。需要は変わらず多いのに、売り出される物件が減っている——これが今の東京の不動産市場の構造です。
東京都区部の中古マンション価格は2桁上昇が続き、高値圏を維持している
新築供給は1973年以降で過去最少水準。中古への需要が集中している
中東情勢の影響によるナフサ不足が建築資材をさらに押し上げている
4月からの審査金利引き上げで借入可能額が縮小。冷静な目線の買い手が増えている
2026年春、中東情勢の緊迫化によるホルムズ海峡の封鎖懸念から、建築資材の原料となるナフサの供給が大きく揺れています。ナフサはプラスチック・断熱材・塗料・接着剤など住宅建材の広範な原料であり、危機前と比べて44%以上の価格高騰が確認されています。
塗料・断熱材・配管材など石油由来の建材を中心に、受注制限や価格引き上げが相次いでいます。中東情勢が改善されたとしても、サプライチェーンが元に戻るまでには数ヶ月程度かかる見通しで、建築コストへの影響は当面続く可能性があります。
これは、すでに人件費・資材費の高騰が続いていた建築業界にとって、さらなる追い打ちとなっています。新築コストの上昇が続くなか、中古マンションへの需要集中はさらに強まる可能性があります。
深川エリアの肌感覚——現場からの正直な話
ここからは、データではなく現場で感じていることをお伝えします。
1億円を超える高額帯の中古マンションは、ひところと比べると動きが鈍くなっています。売り手側がチャレンジ価格で出してくるケースが依然として多く、当初より値下げして成約するパターンが増えてきました。
4月から住宅ローンの審査金利が引き上げられた影響もあり、借入可能額が以前より伸びにくくなっています。「もう少し頑張れば手が届く」と思っていた物件に届かなくなったというお声も増えてきました。買いたい気持ちは変わらないのに、数字が追いつかない局面です。
一方で、湾岸沿いは売り出しの供給が増え、少しだぶついている印象があります。選択肢が増えた分、買い手も慌てずに構えていられる状況です。
新耐震・好管理の物件は、今も動いている。
動きが鈍い物件と、変わらず売れる物件
市場が落ち着いてくると、物件の「質」による差がより鮮明になってきます。
価格交渉が入りやすいのは、強気な価格設定で出てきた物件や、管理状態に不安が残る物件。逆に、新耐震基準を満たし、管理組合がしっかり機能している物件は、今も変わらず動きが活発です。築25年以下は依然として需要が強く、築25年を超えると管理状態や修繕計画の差で売れ行きが分かれやすくなる傾向があります。
私たちが深川で好立地・好管理の物件にこだわっているのも、この考え方からです。短期的な価格の動きよりも、10年後・20年後に「買ってよかった」と言える物件を選ぶことの方が、ずっと大切だと考えています。
「不動産が下がっている」というニュースの、正しい読み方
最近、「不動産市況が下落」「価格に陰り」といった見出しを目にする機会が増えました。それを見て「やっぱり待てばよかった」「これからもっと下がるかも」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ここは少し丁寧に読み解く必要があります。
ここ数年は、チャレンジ価格で売り出してもそのまま成約するという、振り返れば少し異常とも言える状況が続いていました。その時期が落ち着き、市場が健全な価格感覚を取り戻しつつある——私はそう見ています。
これは「値下がりした」という話とは違います。数年前と比べれば価格水準はむしろ上がっています。過熱していた部分が冷め、適正な取引に戻ってきているということではないでしょうか。
「都心の一部エリアで価格上昇の勢いが鈍化」「高額帯の成約に時間がかかるようになった」
チャレンジ価格でも売れた異常な時期が終わり、市場が健全な価格感覚を取り戻しつつある。数年前と比べた価格水準は上がっており、「値下がり」とは言いにくい状況です。
「健全化」と「値下がり」は、まったく別の話です。ニュースの見出しに引っ張られて「もう少し待てば大きく下がるかも」と期待するのは、今の市況の実態からはかなり遠い判断になる可能性があります。
市況レポートや専門家は、何と言っているか
2026年3月〜4月に発表された複数の市況レポートから、共通して読み取れることをまとめます。
「2026年も建設業における人手不足が解消される見込みはなく、労務費の上昇傾向に歯止めがかかる可能性は乏しい。引き続き高止まりする建築費を前提とせざるを得ず、着工の動きも鈍い一年となる。不動産の実需は底堅く、新規供給の少なさが既存物件の価格の下支えに寄与する」
「都心5区では値下げ圧力が強まっているが、東京23区全体では横ばい圏での推移が続いており、急激な市況悪化の兆候は確認されていない。現在の市場は『全面的な下落局面』ではなく、『エリアおよび価格帯ごとの選別が進む局面』にある」
「金利上昇が不動産市場に与える影響は限定的になるものと推測される。すでに価格調整局面に入っているエリアはさらに需要が落ちる一方で、都心部の不動産は引き続きほぼ影響を受けず、格差が拡大する可能性がある。2026年も、引き続きセカンドベストのエリアは高い需要が見込まれる」
急落リスクは低く、都市部の好立地は引き続き底堅い
都心5区など超高額帯の調整は進んでいるが、23区全体への波及は確認されていない
「全面下落」ではなく「エリアと価格帯による選別」が進む局面に入っている
建築費高騰が続くなか、新規供給の減少が既存物件の価格を下支えしている
ひとつ正直に補足しておきます。
専門家が「セカンドベスト」と呼ぶエリアへの需要が高まっているとお伝えしましたが、深川エリア自体もここ数年でかなり価格が上がっています。以前であれば「都心より手が届きやすい」と言えましたが、今はそう単純ではなくなってきました。正直なところ、「セカンドベスト」はさらに郊外に移っているというのが、私の現場の感覚です。
だからこそ、深川で買うかどうかを考えるときに問うべきことが、より明確になってきたとも言えます。
10年後・20年後に売ることも視野に入れるなら、立地と管理の質が価格を守ってくれます。深川はその条件を持つエリアですが、購入価格が上がっている分、将来の値上がり益に過度な期待を持つのは禁物です。資産として持つ意識は大切にしながら、「住む」ことを主軸に考えていただければと思います。
郊外に行けば同じ予算でより広い物件が見つかります。でも通勤・通学にかかる時間は毎日積み上がっていきます。都心へのアクセスが良い深川を選ぶことは、ある意味で「時間を買う」という判断です。その価値をどう見るかは、ライフスタイルによって変わってきます。
お祭りがあって、路地があって、顔なじみの店がある。そういう「まちとの関係」を暮らしの中心に置きたいなら、深川はその答えのひとつになります。数字だけでは測れない価値を、どこまで優先できるか。最終的にはそこに行き着くのではないでしょうか。
どれが正解という話ではありません。ただ、この3つを自分なりに整理してから物件を探し始めると、迷い方が変わってきます。そのための相談相手として、ぜひお声がけください。
1億超の高額帯は動きが鈍くなっており、値下げして成約するケースが増えています
審査金利の引き上げで借入可能額が縮小し、冷静に見る買い手が増えています
新耐震・好管理の物件の動きは変わらず活発で、物件の質による差が鮮明になっています
湾岸沿いは供給が増えてだぶつき気味で、深川エリアとは異なる動きです
インフレが続くなか、価格が大きく下がる材料は今のところ見当たりません
では、今どう動くか
「もう少し待てば下がるかも」という気持ちは、よくわかります。
ただ、インフレで資材価格が高騰し続けているなか、価格が大きく下がる材料が今のところ見当たりません。新築マンションの供給減少と中古への需要集中、海外投資需要の継続が、価格を下支えしています。
中でもここ数年で勢いよく値上がりした、1億超の高額帯については値下がりの余地が出てきていますが、新耐震・好管理の物件はそもそも値下がりしにくい傾向があります。「下がるのを待って、いい物件を掴む」というシナリオは、現実的にはなかなか難しい局面です。
まずは予算の上限を改めて確認することをお勧めします。審査金利が上がったことで、以前シミュレーションした借入額と今の借入可能額がズレている可能性があります。FP相談などで今の自分の数字をきちんと把握することが、最初の一歩になります。
そのうえで、優先順位を見極め、できるだけ「新耐震・好管理・好立地」という自分自身の軸は崩さずに物件を選んでいただきたいと思います。市況が少し落ち着いてきたいま、丁寧に選ぶ時間が少しづつ戻ってきています。その時間を、物件の質を見極めることに使ってください。
単なる物件の紹介屋ではありません。
住まいのこと、お金のこと、この街のこと——
どんな小さなことでも、気軽に話しかけてください。
「まだ決めていない」「何から聞けばいいかわからない」
そんな段階からのご相談を、いつでもお待ちしています。
深川エリアを中心に不動産売買・リフォームに携わる。メディア深川くらしを運営し、現場で積み重ねてきた肌感覚と市況データをもとに、買い手目線の情報を発信している。



コメント