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コラム

その再開発は、門前仲町らしさを残せるか|地上33階建て144mのタワー計画と、建築費高騰の壁

📎 この記事は、2025年11月に公開した2本のコラムの最新版です。
門前仲町・越中島の大規模開発完全ガイド|3つのプロジェクトで変わる街の未来
門前仲町・越中島の開発と下町の未来|変化する街で大切にしたいこと
当時「構想」だった門前仲町駅前の計画が、1年でより具体的な段階に進みました。

門前仲町駅の真上に、地上33階・高さ約144mのタワーが計画されています。区の資料を読むと、防災と駅の不便を解消する「必要な再開発」である一方、建築費の高騰と下町の空気の継承という二つの大きな問いが見えてきます。
永代通りと清澄通りが交わる、門前仲町の交差点。朝は大手町へ向かう人の流れ、夕方は赤ちょうちんへ吸い込まれていく人の流れ。その北東の角に建つ再開発ビルの計画概要が、2026年10月16日、江東区の資料で公表されました。
高さ約144mは、東京タワーのメインデッキ(約150m)とほぼ同じです。富岡八幡宮の境内や深川不動堂の参道、大横川の桜並木からも、街のいたるところからでも目に入る高さになるでしょう。
このニュースへの受け止め方は、人によってさまざまです。神輿を担ぐ人、商店を営む人、ベビーカーで駅を利用する人、お年寄りや何十年もこの街で暮らす人、最近越してきた人。「やっと駅が便利になる」という期待と、「見慣れた風景が変わってしまう」という寂しさは、きっと同じ人の中にも同居しています。
この記事では、賛成か反対かを論じるのではなく、区が公表した三つの資料を丁寧に読み解きます。

そこから、この街を愛する人たちが知っておきたい三つの問いを考えます。なぜ必要なのか。本当に実現できるのか。下町の空気は残せるのか。

文:深川くらし 編集長 柴田 光治/情報の基準日:2026年10月22日

🔍 この記事の要点(30秒でわかる)

  • 計画: 地上33階・高さ約144m・住宅約320戸。1〜2階が商業、4〜7階がオフィス、8〜33階が住宅。駅前広場と、地下鉄の乗換えバリアフリールートが整備される。
  • 必要性: 1日約18.9万人が使う駅なのに、エレベーターだけでは乗り換えられない。水害時に一時避難できる施設もエリア内にない。
  • 実現性: 建築費の高騰が最大の壁。隣の越中島では、ヤマタネがデベロッパーの選定を先送りした。計画の数字はこの先変わり得る。
  • 下町らしさ: 配慮は資料に明記されている。一方で、アーケードの代わり、テラスの日常利用、テナント構成、新しい住民と地域のつながりは、まだ決まっていない。
  • 声を届ける機会: 都市計画案の縦覧と区民説明会。2027年1月ごろと見込まれている。

門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業 計画概要資料から抜粋

目次

期待と、寂しさ|街の人たちの二つの気持ち

資料を読み進める前に、この計画が街の人たちにもたらす二つの気持ちを並べておきます。どちらも、この街を大切に思うからこそ生まれるものです。

駅

期待
ベビーカーや車いすでも、エレベーターだけで東西線と大江戸線を乗り換えられる。東西線側に新しい改札もできる

寂しさ
工事が続く数年間は、駅前の歩き方や景色が変わる

交差点

期待
人が待ち合わせ、一息つける駅前広場が生まれる

寂しさ
低い家並みが続いてきた空に、144mの塔が加わる

アーケード

期待
広場や貫通通路、拡幅される道で、歩きやすさは増す

寂しさ
区域内のアーケードは撤去予定。雨の日に軒下を歩いた風景が一つ消える

お店

期待
商業とオフィスが入り、昼間の人通りが増える

寂しさ
区域内のいまの建物はいったん解体される。なじみの店が戻ってくるかは、まだわからない

暮らしと祭り

期待
水害時に逃げ込める場所ができる。新しい住民が担ぎ手になれば、祭りは次の世代へつながる

寂しさ
顔の見える町に、知らない隣人が一度に約320世帯増える

寂しさは、反対の意思表示ではありません。期待と寂しさの両方を言葉にしておくことが、計画をこの街に合ったものにしていく出発点になります。ここから先は、その二つの気持ちを手がかりに、資料を読み解いていきます。

計画の全貌|「構想」から「数字」の段階へ

深川くらしが2025年11月にお伝えした時点では、まだ「駅直結タワーの構想」でした。今回、高さも戸数も、どの階に何が入るかも、数字で示されています。正式名称は「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業」です。

項目 内容
所在地 江東区門前仲町二丁目5・6番(門前仲町交差点の北東側)
施行区域 約0.7ha
敷地面積 約3,780㎡
建築面積 約2,600㎡(建蔽率 約69%)
延床面積 約49,300㎡(計画容積率 約884%/指定は600%・400%)
階数・高さ 地上33階・地下2階/約144m(鉄筋コンクリート造)
用途構成 1〜2階 商業、4〜7階 業務(オフィス)、8〜33階 住宅
住宅戸数・駐車場 約320戸・約140台
事業手法 第一種市街地再開発事業(組合施行)
事業協力者 三菱地所レジデンス

出典:江東区「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業 計画概要」(2026年10月16日)、建設通信新聞(2026年10月20日)

前回の記事から、何が変わったか

  • 区の正式な方針ができた。 江東区は2026年6月に「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」を策定し、この地区を「重点地区」に位置づけました。
  • 駅の姿が具体的になった。 地下2階に東西線側の新しい改札と地下広場ができ、大江戸線との乗換えにバリアフリールートが通ります。駅前広場にはエレベーター・エスカレーター付きの地下鉄出入口が新設されます。
  • 周りの道も変わる。 区域内の区道(深104号)の一部は廃止され、同じ位置に歩行者専用の貫通通路ができます。東側の狭い区道(深105号)は幅3.0〜3.5mから6.25mへ広がり、都営バスの停留所は西側へ移ります。
  • アーケードは、区域内では撤去予定。 この点は後の章で詳しく触れます。

⚠️ 訂正
前回の記事では準備組合の設立を「2019年5月」、方針策定を「2026年3月目標」と記載しましたが、区の資料では準備組合の設立は平成30年(2018年)5月、方針の策定は2026年6月です。お詫びして訂正します。

なお、越中島側では野村不動産の「プラウドシティ門前仲町」(667戸)が2027年12月の竣工を予定しています。さらにその先では、倉庫業のヤマタネが越中島一丁目の自社所有地(約3.3ha)で大規模な開発を構想しています。駅前のタワーは、この一帯で続く変化の「第二波」にあたります。

▶ 原文を読む:江東区「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業 計画概要」PDF

建物を下から歩いてみる|各階に何ができるのか

区の計画概要と推進会議の議事録を合わせて読むと、この建物は「上は住まい、下は街のもの」という二層の性格を持っていることがわかります。地下2階から3階までが、住民でなくても使える場所です。

再開発ビルの構成(江東区の計画概要と会議録をもとに深川くらし作成)

地下2階:駅と街の新しい玄関。 東西線側に新しい改札ができ、地下広場を通って大江戸線へ、エレベーターだけで乗り換えられるようになります。エレベーターはストレッチャーにも対応する20人乗り程度が想定されています。地下鉄から広場への動線は、始発から終電まで通れる計画です。
1階:交差点に生まれる広場。 交差点に面して駅前広場ができ、エレベーター・エスカレーター・階段を備えた地下鉄出入口が新設されます。廃止される区道の位置には、歩行者専用の貫通通路が通ります。区の資料には、日常の利用イメージとともに、深川八幡祭りの際に広場を使うイメージも描かれています。
1〜2階:商業。 「まちの路地的なスケール感」を意識し、深川不動堂と富岡八幡宮をイメージしたデザインを低層部に取り入れるとされています。
3階:テラスと駐輪場。 テラスは水害・震災時の一時避難の場です。景観面では、何層にも緑が重なる空間にする計画です。駐輪場は建物の利用者向けで、公共の駐輪場は周辺に大きな不足がないとして計画されていません。
4〜7階:オフィス。8〜33階:住宅。 住宅は「多様な世帯が住み続けられる質の高い住宅」とされ、ファミリー・単身・シニアの各世帯が想定されています。

交通と環境:会議録から見える細部

  • バス停: 東側の区道を広げるのに合わせ、都営バスの停留所を西側へ移します。区域内のアーケードは撤去予定のため、委員からはバス停にも日よけ・雨よけを求める意見が出ています。
  • タクシー: 敷地は約3,780㎡と再開発としては狭く、車寄せは計画されていません。乗り降りは、交通量の少ない東側の区道が想定されています。委員からは、将来の自動運転タクシーの乗降場所も見込んでおくべきだという指摘がありました。
  • シェアサイクル: ポートの位置は未定です。区は広場などに置けるよう事業者と調整するとしています。
  • 脱炭素: 太陽光発電やエネルギー管理システム、グリーン電力の購入、住宅部分の「GX ZEH-M Oriented」認定取得などが検討されています。
  • 緑: ほとんど緑のない現在の敷地に対し、地上部と建物上部の緑化で緑化率35%を満たす計画です。

駅前だけではない|区の方針が描く、エリア全体の将来像

タワーの計画は単独の話ではありません。江東区が2026年6月に定めた「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」は、門前仲町一・二丁目と富岡一丁目の全体を対象にしています。駅前の再開発区域は、その中で先頭を走る「重点地区」という位置づけです。

この街の成り立ち

方針は、まず街の歴史から書き起こしています。いまの「門前仲町」という町名は、昭和6年に黒江町・門前山本町と蛤町の一部が合わさって生まれました。古くは富岡八幡宮の別当寺・永代寺の門前町屋として栄えた場所です。隣の富岡には、かつて浅草の三十三間堂が移り、遠矢の数を競ったことに由来する「数矢町」という町名もありました。
深川八幡祭りは、1642年に徳川家綱の成長を祈念して始まり、翌1643年から神輿の渡御が行われてきたと方針は紹介しています。毎月1日・15日・28日の縁日も、深川の風情をつくる行事として明記されています。区の公式文書が、祭りと縁日を街の大切な資源としてわざわざ書き込んでいることは、覚えておきたい点です。

東京都と区の計画で、門前仲町はどう位置づけられているか

計画 門前仲町の位置づけ
東京都「都市再開発の方針」(2021年3月) 再開発を誘導する「誘導地区(江-サ)」。鉄道2路線と幹線道路が交わる立地を生かす再開発を誘導する
東京都「都市開発諸制度活用方針」(2025年3月) 「活力とにぎわいの拠点地区(K-24)」。ただし、商業・業務の集積は地域特性に応じてコンパクトにし、周辺の住宅地との調和を図るとされる
東京都「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」 ベイエリアの玄関口となる「AREA1」。歴史や水辺を生かした回遊性の向上
江東区「都市計画マスタープラン2022」 「門前仲町・越中島都市核」。歴史と文化、水辺を生かした都市型観光の拠点
江東区「景観計画」 「深川門前仲町景観重点地区」。目標は「水辺がつなぐ深川気風」

東京都の制度そのものに、「行き過ぎた集積は周りの住環境に影響する」というブレーキが書き込まれていることは見逃せません。にぎわいと静かな暮らしの両立は、地元の願いであると同時に、都のルールでもあるのです。

4つのエリアと2本の軸

方針は、エリアを4つのゾーンと2本の軸に分け、それぞれに目標を定めています(名称は筆者が要約)。

にぎわい・交流

中心となる場所
門前仲町駅の周辺(重点地区を含む)

方針が目指すこと
商業・業務・交流の拠点づくり、駅前広場、バリアフリー化、災害時に使えるオープンスペース

門前町

中心となる場所
深川不動堂・富岡八幡宮の周辺

方針が目指すこと
歴史資源を生かした景観、商業施設と連携した回遊

水辺

中心となる場所
大横川沿い

方針が目指すこと
水辺の散歩道の整備、緑のネットワーク、水辺を生かしたイベント

住まい

中心となる場所
住宅地と公共施設、深川東京モダン館の周辺

方針が目指すこと
景観を守り身近な商業と共存する住環境、浸水対策と耐震・不燃化

2本の軸

中心となる場所
永代通り・清澄通りの沿道

方針が目指すこと
商店街と連続したにぎわい、広域避難の動線確保、多様な移動手段

駅前のタワーは、この地図の中心にある一つのピースです。完成後に人の流れが参道や大横川へ広がるかどうかが、エリア全体の評価を決めることになります。

エリアマネジメント:いまから街の人が関われる部分

方針は、地域住民や事業者が主体となる「エリアマネジメント推進組織」の設立を目指すとしています。挙げられている活動の例は、とても身近なものです。

  • 公共空間を使った交流イベントや、商店街の集客イベント
  • 備蓄倉庫の整備、地域合同の防犯訓練、帰宅困難者の支援訓練
  • 広報紙やSNSでの情報発信
  • 受動喫煙やポイ捨て、飲食店の路上での客引きを減らす呼びかけ
  • ごみ拾いや植栽の手入れ

担い手として想定されているのは、町会・商店会・企業、そして新しく住む人たちです。区は情報提供や関係機関との調整で支える役割とされています。タワーが完成するかどうかに関わらず、ここは今日からでも街の人が関われる部分です。

▶ 原文を読む:江東区「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」PDF

越中島で動くもう一つの大型開発|ヤマタネ「越中島開発グランドビジョン」

門前仲町の未来を考えるとき、駅前のタワーと並んで欠かせないのが、大横川を挟んだすぐ隣、越中島一丁目で構想されているヤマタネの開発です。区の都市計画マスタープランでも、門前仲町と越中島は一つの「門前仲町・越中島都市核」として位置づけられています。

どんな土地か

ヤマタネが2025年5月に公表した「越中島開発グランドビジョン」によると、対象地は江東区越中島一丁目の約9,900坪(約3.3万㎡)。いまは営業倉庫とオフィスビルとして使われ、用途地域は準工業地域、容積率は300%です。隅田川と大横川に挟まれた水辺の土地で、資料は京葉線の越中島駅から東京駅まで4分、東西線の門前仲町駅から大手町駅まで5分という近さを強調しています。
土地の歴史も、この街らしいものです。江戸時代初期の1650年代に埋め立てられ、御家人の屋敷や町人地として使われました。明治期以降は陸軍の練兵場や糧秣本廠となり、1956年にこの地で操業していた倉庫会社とヤマタネが合併してからは、約70年にわたって同社の事業の中心でした。

何をつくろうとしているのか

コンセプトは「続く」を支えること。土地を三つのゾーンに分ける構想です。

 

ゾーン ビジョンが掲げる役割
まち 内外の人やモノの交流点をつくる
人 水辺と緑に囲まれた上質な住環境と、災害に強い防災拠点をつくる
食文化と農業 食文化や農業の「みらい」に触れる機会をつくる

想定される用途は、複合住宅、ホテル・観光拠点、商業施設、公園、道路などの公共施設です。東京都の都市開発諸制度を使い、現在300%の容積率を500%超まで緩和することを目指すとしています。周辺との共同開発の可能性を探ることも明記されています。

いま、どこまで進んでいるか

当初のビジョンでは、2026年3月までにデベロッパーなどの「事業パートナー」を選び、2034年度以降に一部の供用を始める想定でした。しかし2026年3月18日、ヤマタネは建設費の高騰などを理由に、デベロッパーの選定をいったん見送りました。代わりに、行政協議や都市計画の手続きを支える「計画策定パートナー」として清水建設を選び、まちづくり準備協議会を通じて地域と話し合いながら計画を具体化するとしています。開発を担う「事業実施パートナー」は改めて選び、2028年度中に事業計画を公表する予定。

三つの開発を並べてみる

門前仲町駅前(再開発)

主体
地権者の準備組合(事業協力者:三菱地所レジデンス)

敷地
約3,780㎡(施行区域 約0.7ha)

中身
地上33階・約144m。店舗・オフィス・住宅約320戸

現在地
区が2026年10月に都市計画手続きの開始を予定

越中島(プラウドシティ門前仲町)

主体
野村不動産(東京科学大学の土地を定期借地)

敷地
約17,967㎡

中身
地上19階。分譲667戸、サービス付き高齢者向け住宅113戸、商業兼地域共用棟

現在地
工事中。マンションは2027年12月竣工予定

越中島(ヤマタネ)

主体
ヤマタネ(自社所有地)

敷地
約9,900坪(約3.3万㎡)

中身
複合住宅、ホテル・観光拠点、商業、公園などを構想

現在地
計画づくりの段階。2028年度中に事業計画を公表予定

出典:江東区 資料9-1・9-2(2026年10月16日)、建設通信新聞、ヤマタネ「越中島開発グランドビジョン」、ヤマタネ プレスリリース(2026年3月18日)

街の人たちにとっての意味

期待は、門前仲町の駅前から越中島の水辺まで、歩いて楽しめる範囲が大きく広がることです。ビジョンは、水辺を生かした舟運や次世代の移動手段の拠点になる可能性にも触れています。駅前に広場ができ、越中島に公園や水辺の空間が生まれれば、門前仲町の暮らしの範囲は川沿いへと伸びていきます。
一方で、長く倉庫街だった越中島の静かな風景は、確実に変わります。ヤマタネは、まちづくりのアンケートや勉強会を重ね、地域との交流として「ヤマタネさくらまつり」も開いてきました。駅前と同じく、ここでも地域との対話の場が用意されています。二つの開発を別々ではなく一つの街の変化として見ていくことが、これからの10年を考える上での鍵になるでしょう。

▶ 原文を読む:ヤマタネ「越中島開発グランドビジョン」PDF

「仕方ない」ではなく「必要」|この街が抱えてきた5つの課題

区のまちづくり方針を読むと、この再開発は「仕方ない」というより、街が長年抱えてきた課題への答えとして設計されていることがわかります。毎日使っていると慣れてしまう駅前の不便と危うさが、資料では数字で示されています。

駅の乗換え

いまの門前仲町(区の資料より)
1日平均約18.9万人が使う2路線の交差駅なのに、構内でエレベーターだけで乗り換えられない。地上に出て出口2と出口6の間を歩く必要がある

計画が用意する答え
地下2階に乗換えバリアフリールート。ストレッチャー対応・20人乗り程度のエレベーターを想定。駅から広場への動線は始発から終電まで通行可

水害

いまの門前仲町(区の資料より)
高潮で1.0〜3.0m、洪水で0.5〜3.0mの浸水が1日以上3日未満続く想定。エリア内に水害時の「一時避難施設」がない

計画が用意する答え
水害・震災時の一時避難の場(3階テラス等)と地域の防災備蓄倉庫

地震・火災

いまの門前仲町駅周辺(区の資料より)
冬の夕方の出火危険度がランク4で、区内でも比較的高い。幅4m未満の細い道も残る

計画が用意する答え
東側区道を3.0〜3.5mから6.25mへ拡幅し、緊急車両が通れるように。駅前広場を地域の防災拠点に

人が溜まれる場所

いまの門前仲町(区の資料より)
交差点にバス停と地下鉄出入口が集まり、歩道の有効幅が狭い。滞留できる空間がない

計画が用意する答え
交差点部に駅前広場、敷地外周に歩道状空地、南北を抜ける貫通通路

緑地

いまの門前仲町(区の資料より)
門前仲町二丁目の緑被率は5.88%。区平均21.01%に対し、区内の下位10町丁目に入る

計画が用意する答え
地上部と建物上部の緑化で、緑化率35%を確保

出典:江東区「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」(2026年6月)、第18回 江東区都市計画マスタープラン2022推進会議 会議録(2026年8月26日)
ベビーカーを押して出口2から出口6へ雨の中を歩いたことのある方なら、一行目の重みはわかるはずです。そして水害の行は、江東区で暮らす私たち全員の問題です。

📌 読み解きのポイント:高さは「公共貢献の対価」である
表の「指定600%に対し計画約884%」という数字に注目してください。この差が、タワーになる理由です。
再開発では、広場や歩行者通路、駅の改良といった公共への貢献と引き換えに、本来の上限を超える床(容積)が認められます。上乗せされた床で住宅やオフィスをつくり、それを売った代金が、広場や駅の工事を支える仕組みです。
つまり「広場も、乗換えのエレベーターも欲しい。でも高い建物は嫌だ」は、この仕組みの上では両立しにくい。高さは、私たちが受け取る公共空間の「代金」でもあるのです。区が会議で主な公共貢献として挙げたのも、交差点の駅前広場を地下の駅と街をつなぐ歩行者動線の核にすることでした。

実現性を読み解く|立ちはだかる3つの壁

資料と市況から見えてくるのは、「実現の可能性は十分にある。ただし、いまの計画のまま完成するとは限らない」という姿です。理由は、建築費・販売市場・時間という三つの壁にあります。

壁1 建築費:中野サンプラザが示した現実

再開発の世界で、いま誰もが思い浮かべるのが中野サンプラザです。野村不動産などによる計画は、施行認可の申請段階で総事業費約2,639億円とされていましたが、工事費の急騰で約900億円増え、3,500億円余りに膨らむ見通しとなりました。申請は2024年に取り下げられ、2025年6月には計画が白紙になりました(東京新聞、Business Insider Japan)。区は2026年8月、区有地に定期借地を一部取り入れるなどの新たな方針を示し、2034年度の完成を目指して仕切り直しています(TOKYO MX)。
その中野の件で取材に応じた大手デベロッパーの社員は、自身が担当した都心のプロジェクトで、工事費の坪単価が2020年時点の約140万円から、いまは300万円を超える見積りも出ていると証言しています。公的な指標でも、建設物価調査会の建築費指数(東京、2015年=100)は、2026年4月時点で鉄筋コンクリート造の集合住宅が143.8と、前年同月より5.8%上がりました。同じ記事では、超高層を1棟で建てる場合は施工できる会社がスーパーゼネコン5社に限られ、見積りが高くなりやすいという見方も紹介されています(Business Insider Japan)。門前仲町の計画は、まさに超高層1棟です。
門前仲町の計画には、コストを押し上げやすい条件が重なっています。

  • 地下2階と、2路線の駅への接続。 営業中の地下鉄に近接する工事は、東京メトロ・都交通局との協議に時間がかかり、工法も限られます。
  • 約3,780㎡という狭い敷地。 区自身が「再開発としては狭い」と認め、車寄せも置けないほどです。工事ヤードも取りにくい。
  • 交通量の多い幹線道路の交差点。 永代通りと清澄通りを止めずに工事を進める必要があります。

一方で救いもあります。中野の旧計画は地上61階・高さ262mの超大型案件でした(東京新聞)。門前仲町はその半分ほどの高さで、事業の規模もはるかに小さい。単純な比較はできませんが、見直しや調整の小回りは利くはずです。

すぐ隣の越中島でも:ヤマタネが「デベロッパー選定」を先送り

建築費の壁は、門前仲町のすぐ隣でも表れています。先の章で紹介したヤマタネは、2026年3月までにデベロッパーを中心とする事業パートナーを選ぶ予定でしたが、建設費の高騰と物価上昇で各地の再開発が見直しを迫られているとして、その選定を見送りました(ヤマタネ プレスリリース)。
計画を止めたわけではありません。ただ、条件の良い大きな土地を一社で持つ地主でさえ、いまは「急がず、まず計画を固める」判断をしている。この事実は、駅前の再開発を見るうえでも参考になります。

壁2 不動産販売市場:320戸は「事業のエンジン」

再開発の資金の柱は、権利者に戻す床(権利床)とは別に生まれる床(保留床)の売却です。この計画では、約320戸の住宅の多くがそのエンジンにあたると考えられます。
不動産市場はいま、明らかに潮目にあります。東京23区の新築マンション平均価格は2025年度に1億3,784万円と過去最高でした(時事通信)。一方で中古は、23区の平均価格(東京カンテイ調べ、70㎡換算)が2026年8月まで3カ月連続で下落しています(共同通信)。湾岸の高額中古の売り出し在庫も、2025年1月の約1,050件から2026年4月には約1,500件へ増えたと報じられています(アゴラ)。
計画通りに進んでも、住戸が売り出されるのは早くても2030年以降となるでしょう。その時の市況は誰にもわかりません。前出のデベロッパー社員も、建設費の上昇分をマンション価格に転嫁できるのは駅前など条件の良い場所に限られると話しています。東京駅からも近い、2路線の駅直結という恵まれた条件は、下落局面でも最後まで買い手が残りやすい立地です。市場リスクは「売れない」より「想定の価格で売れるか」にあると言えるでしょう。

壁3 時間:遅れること自体がコストになる

江東区は2026年10月に、都市計画の決定・変更の手続きを始める予定としています(江東区 資料9-1)。決定は2027年3月ごろとの見方がありますが、その後も組合設立、権利変換、解体、着工と段階が続き、工期はまだ示されていません。完成は早くても2030年代になるでしょう。建築費が上がり続ける局面では、時間がかかるほど事業の数字は苦しくなります。

コストが膨らんだとき、事業が動かせる6つのレバー

建築費が想定を超えたとき、再開発事業が収支を合わせる方法は、ほぼ次の6つしかありません。

  1. 住戸をより高く売る(保留床の単価を上げる)
  2. 床をさらに増やす(いっそう高く、大きくする)
  3. 補助金を増やす(つまり税金)
  4. 権利者の取り分を減らす(権利変換で受け取る床が減る)
  5. 計画を削る(仕様・デザイン・公共空間のこだわりを落とす)
  6. 時期をずらす(延期・仕切り直し)

この街で暮らす人たちにとって気がかりなのは、5番でしょう。収益を生まない「街のための部分」は、帳尻合わせで真っ先に削られやすいからです。低層部の門前町らしいデザイン、広場のしつらえ、テラスの開放、アーケードに代わる軒下。私たちが「下町らしさの継承」として期待している部分ほど、実は守るのが難しいのです。
だからこそ、都市計画決定の時点の数字と、その後の組合設立・権利変換の時点の数字を、住民が見比べ続けることに意味があります。

下町の雰囲気は持続できるか|鍵は「建物」より「運営」と「区域の外」

下町らしさは、建物のデザインだけでは守れません。守れるかどうかは、完成後の運営と、再開発区域の「外側」で何が起きるかにかかっています。

計画が約束していること

区の資料には、下町への配慮がかなり具体的に書かれています。ここは素直に評価したい点です。

  • 低層部に、深川不動堂と富岡八幡宮をイメージしたデザインを取り入れる
  • 商業施設は「まちの路地的なスケール感」を意識し、アーケードとの連続性に配慮する
  • 駅前広場を、深川八幡祭りや東京マラソンの際に活用する
  • エリアマネジメント組織をつくり、イベントや防災訓練、客引き・ポイ捨て・受動喫煙への啓発を行う

まだ決まっていないこと

一方で、8月の推進会議の議事録を読むと、「これから検討」の段階にある論点も見えてきます。

論点 現時点の扱い(区の回答より)
アーケード 区域内は撤去予定。日よけ・雨よけの機能を補う対応を事業者に「求めていく」段階
3階テラス 水害時の一時避難の場だが、日常の使い方は想定されていない。委員からは、普段から開かれた場にする提案
新しい住民と地域 委員が「地域コミュニティに参加する人に住んでほしい」と要望。区は事業者を「引き続き指導」
投機 委員が、駅直結で高額になり投機の対象になることを懸念。区は不動産協会の取り組みを基本に、販売方法の工夫を指導する方針
1〜2階のテナント 構成は未公表。従前の店舗がどれだけ戻るかも、これから

320戸は、この街の世帯の約1割

数字で見ると、この再開発が地域に与える影響の大きさがわかります。区の方針の対象エリア(門前仲町一・二丁目、富岡一丁目)は、2025年時点で人口4,566人・3,191世帯です。世帯の平均人数は1.43人と、単身化が進んでいます。
そこに約320戸が加わると、世帯数はおよそ1割増える計算です(筆者試算)。この人たちが町会に入り、お神輿を担げば、祭りの担い手不足は少しは和らぐでしょう。逆に「住むだけの人」が1割増えれば、町会の実感は薄まります。どちらに転ぶかは、建物ではなく、入居の段階の仕組みで決まります。

本当のリスクは、0.7haの「外側」にある

区の方針は、エリアの課題として「下町らしさと静かで落ち着いた居住環境の維持・保全」を挙げています。ただ、具体的な事業計画が示されているのは、0.7haの区域の中だけです。下町の空気にとって本当に大きいのは、タワーが引き上げる周辺の地価が、その周りの小さな建物に与える影響かもしれません。
門前仲町の空気をつくっているのは、毎月開催される縁日、仲町通りの商店、辰巳新道の小さな飲み屋、低層の店舗兼住宅などです。地価が上がれば、固定資産税や相続税の負担も重くなりやすい。相続をきっかけに小さな店舗兼住宅が売られ、ワンルームマンションなどに建て替わる。家賃が上がり、個人店がチェーン店に替わる。これは、今でも静かに進み得る変化です。
下町の空気が失われるとしたら、それは144mのタワーによってではなく、その足元の「古い建物」が一軒ずつ消えていくことによってでしょう。

地域から見た、これからの7つの論点

資料と議事録を読み合わせると、この街を愛する人たちがこれから見守り、問いかけていける論点が見えてきます。多くは、すでに専門家会議の委員が指摘し、区が「今後検討」「事業者に求めていく」と答えているものです。

  1. 新しい住民が、町の一員になれる仕組みはあるか。
    委員は「地域コミュニティに参加してくれる人に住んでほしい」と求めています。町会への加入やエリアマネジメントの費用を、管理規約の段階から組み込めるかが鍵になります。
  2. 1〜2階に、地元の店は残るか。
    低層部は「路地的なスケール感」を意識するとされていますが、テナント構成はまだ示されていません。従前の店舗の戻りや、地元の個人店が借りられる区画があるかどうかで、門前町らしさは大きく変わります。
  3. 3階テラスは、普段から開かれるか。
    水害時の一時避難の場ですが、日常の使い方はまだ想定されていません。委員からは、普段の魅力の延長で非常時にも使える「フェーズフリー」の提案が出ています。
  4. アーケードの役割を、何が引き継ぐか。
    区域内のアーケードは撤去予定となっています。区は日よけ・雨よけの機能を補う対応を事業者に求めていくとしています。
  5. 区域の外の街並みは、どう守るか。
    区の方針には、地区計画などの手法の活用が書かれています。仲町通りや参道沿いの高さや1階の用途を、タワーと同じ時間軸で考えられるかが問われます。
  6. 投機ではなく、暮らす人に届くか。
    委員は、駅直結で高額になり投機の対象になることを懸念しました。区は不動産協会等の取り組みを基本に、販売方法の工夫を指導するとしています。
  7. 数字が変わったとき、何を守るか。
    事業費や住戸価格の前提が変わったとき、何を削り何を守るのか。節目ごとの説明を求め続けることが、削られやすい「街のための部分」を守る一番の方法です。

今後のスケジュール|声を届けるなら、都市計画案の縦覧のとき

門前仲町駅前再開発のスケジュール。2018年準備組合設立、2026年6月まちづくり方針策定、2026年10月計画概要公表と都市計画手続き開始、2027年1月ごろ縦覧、3月ごろ都市計画決定の見込み

再開発のスケジュール(区の予定以外は見込み。深川くらし作成)

都市計画の案が縦覧される期間には、住民や利害関係者が意見書を提出できます(都市計画法第17条)。区民説明会と合わせ、地域の声を計画に反映できる最大の機会です。日程は区の広報やホームページで告知される見込みなので、ぜひ注目してください。
スケジュールのうち、区の公表資料で確認できるのは「2026年10月に都市計画の決定・変更手続きを開始」までです(江東区 資料9-1)。区域内の権利者への説明会(10月末)、区民説明会と案の縦覧(2027年1月)、決定告示(3月)は、地域の開発情報を発信するブログ「どらったら!!」が伝えた見込みで、変わる可能性があります。正式な日程は区の広報やホームページで確認してください。

記事に出てくる言葉のミニ解説

説明会や縦覧の資料を読むときに役立つ言葉を、まとめておきます。

言葉 意味
第一種市街地再開発事業 地権者の土地・建物の権利を、新しいビルの床の権利に置き換えて進める再開発。今回は地権者がつくる組合が施行する
権利床・保留床 権利床は、元の地権者が受け取る新しいビルの床。保留床は、それ以外に生まれる床で、売却して事業費にあてる。今回は住宅の多くが保留床として販売されると考えられる(権利者が住戸を取得する場合もある)
準備組合・再開発組合 準備組合は事業化を検討する任意の団体。都市計画決定の後、都知事の認可を受けて正式な再開発組合になる
都市計画決定と縦覧 区域や建物の高さ・容積などを都市計画として定める手続き。案は2週間、誰でも見られる形で公開(縦覧)され、住民や利害関係者は意見書を出せる
容積率・高度利用 容積率は敷地面積に対する延床面積の割合。広場などの公共貢献と引き換えに上限を緩める仕組みがあり、今回は指定600%・400%に対し計画約884%
権利変換 元の権利を新しいビルの床に置き換える手続き。計画が認可されると、既存建物の解体・着工へ進む
浸水対応型拠点建築物 水害時に建物の利用者や近隣の人が逃げ込める場所、浸水しない階での備蓄や設備、救助のための機能を備えた中高層の建物。区が整備を進めている
エリアマネジメント 地権者や住民、企業が主体となり、行政と連携しながら地域の運営やにぎわいづくりを行う取り組み
フェーズフリー 普段使っているものや場所を、災害時にもそのまま役立てる考え方

参考:国土交通省「市街地再開発事業」、江東区「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」用語解説

まとめ|144mのタワーが、新しい「町の顔」になるために

深川八幡祭りの日、永代通りを神輿が渡っていく。数年後、その頭上には高さ144mの塔が立っているかもしれません。
その塔が、祭りの日に担ぎ手を見守り、縁日の日に人が集まる、新しい「町の顔」になれるかどうか。それを決めるのは、設計図だけではありません。そこに住む320世帯が祭りに加わるか。1階に地元の店が残るか。足元の2階建ての商店が、10年後も灯りをともしているか。
防災のために、駅のために、この再開発は必要なのかもしれません。同時に、見慣れた交差点の風景が変わる寂しさも、自然な気持ちです。そして、必要だからといって白紙委任をするわけではありません。数字を見続け、説明会や縦覧の場で声を届け、新しい隣人を町に迎え入れる。下町の空気を守ってきたのは、いつの時代も、この街で暮らす人たち自身でした。

おわりに|編集長・柴田より

資料を読み込んで、期待が膨らむ気持ちと、身が引き締まる寂しい部分の両方がありました。駅の乗換えや水害への備えが、ようやく形になろうとしていることは素直にうれしいこと。その一方で、アーケードの下を歩くいつもの道が、いずれ思い出になるのかと思うと、やはり寂しくもあります。そして、建築費の高騰が続くいま、「街のための部分」がこの先どれだけ守られるかは、私たちが見続けるかどうかにかかっていると感じます。
完成した建物の足元で、今と同じように縁日の露店や商店が並んでいる。そんな未来を、この街を愛する皆さんと一緒に見届けたいと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 門前仲町駅前の再開発は、どんな計画ですか?

A. 正式名称は「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業」です。門前仲町交差点の北東側(江東区門前仲町二丁目5・6番、施行区域約0.7ha)に、地上33階・地下2階、高さ約144m、延床面積約49,300㎡の複合ビルを建てる計画です。1〜2階が商業、4〜7階がオフィス、8〜33階が約320戸の住宅で、地権者でつくる準備組合が進め、三菱地所レジデンスが事業協力者として参画しています(江東区、2026年10月16日公表)。

Q. 門前仲町駅前の再開発は、いつ完成しますか?

A. 工期はまだ公表されていません。江東区は2026年10月に都市計画の決定・変更手続きを始める予定としており、決定は2027年3月ごろとの見方があります。その後、再開発組合の設立、権利変換、既存建物の解体を経て着工するため、完成は早くても2030年代になると考えられます。

Q. 東西線と大江戸線の乗り換えは、どう変わりますか?

A. 門前仲町駅は1日平均約18.9万人が利用する2路線の交差駅ですが、現在は駅構内でエレベーターだけを使って乗り換えることができず、地上に出て出口2と出口6の間を移動する必要があります。計画では、地下2階に乗換えバリアフリールートと地下広場が整備され、東西線側に新しい改札もできます。エレベーターはストレッチャー対応の20人乗り程度が想定されています。

Q. 再開発で、防災面は何が良くなりますか?

A. 門前仲町周辺は高潮で1.0〜3.0m、洪水で0.5〜3.0mの浸水が想定され、エリア内に水害時の一時避難施設がありません。計画では、水害・震災時の一時避難の場(3階テラス等)、地域の防災備蓄倉庫、防災拠点となる駅前広場が整備されます。幅3.0〜3.5mの東側区道も6.25mに広げられ、緊急車両が通りやすくなります。

Q. なぜ高さ144mのタワーになるのですか?

A. 再開発では、駅前広場や歩行者通路、駅の改良といった公共への貢献と引き換えに、本来の上限を超える容積が認められます。この計画の容積率は指定600%・400%に対して計画約884%で、上乗せされた床の住宅などを売却した代金が事業費を支えます。高さは、街が受け取る公共空間の「対価」という側面を持っています。

Q. 建築費の高騰で、計画が変わる可能性はありますか?

A. 可能性はあります。中野サンプラザの再開発は工事費の急騰で事業費が膨らみ、計画が白紙になりました。すぐ隣の越中島でも、ヤマタネが建設費の高騰などを理由に、2026年3月にデベロッパーの選定を見送っています。門前仲町の計画も、都市計画決定以降の段階で規模や仕様、スケジュールが見直されることはあり得ます。

Q. アーケードや商店街は、どうなりますか?

A. 再開発区域内のアーケードは撤去される予定で、江東区は日よけ・雨よけの機能を補う対応を事業者に求めていくとしています。低層部は「まちの路地的なスケール感」を意識し、深川不動堂と富岡八幡宮をイメージしたデザインを取り入れる計画ですが、1〜2階のテナント構成はまだ公表されていません。

Q. 越中島のヤマタネの開発とは、どんな計画ですか?

A. 倉庫業のヤマタネが、江東区越中島一丁目の自社所有地約9,900坪(約3.3万㎡)で構想する大規模開発です。現在は準工業地域・容積率300%ですが、500%超への緩和を目指し、複合住宅、ホテル・観光拠点、商業施設、公園などを検討しています。2026年3月に清水建設を計画策定パートナーに選び、2028年度中に事業計画を公表する予定です。

Q. 住民が計画に意見を伝える機会はありますか?

A. あります。都市計画の案が縦覧される2週間の間に、住民や利害関係者は意見書を提出できます(都市計画法第17条)。縦覧と区民説明会は2027年1月ごろと見込まれており、正式な日程は江東区の広報やホームページで告知されます。

これまでの記事|1年前の「構想」から読み比べる

深川くらしでは、門前仲町・越中島の開発を継続して追いかけてきました。今回の記事は、次の2本をアップデートしたものです。
門前仲町・越中島の大規模開発完全ガイド|3つのプロジェクトで変わる街の未来(2025年11月28日)
野村不動産の越中島の開発、駅前の再開発、ヤマタネの越中島開発という三つのプロジェクトを、当時の公表情報で紹介しました。駅前の計画は、まだ「駅直結タワーの構想」と「4つの整備方針」の段階でした。今回の記事では、その計画が地上33階・約144m・約320戸という具体的な姿になったこと、ヤマタネがパートナー選びの進め方を見直したことをお伝えしています。
門前仲町・越中島の開発と下町の未来|変化する街で大切にしたいこと(2025年11月29日)
再開発によって地域が高級化し、もとの住民や商店が住み続けにくくなる「ジェントリフィケーション」をテーマに、海外の事例も交えて、門前仲町で守りたいものを考えました。今回の記事では、その問いを区の資料と議事録に照らし、何が計画に書かれ、何がまだ決まっていないのかを具体的に整理しています。
1年前に「懸念」として書いたことのいくつかは、いま専門家会議の議題として正式に扱われるようになりました。街の声が届く余地は、確かにあります。
あわせて読みたい:


【参考資料・情報元】
江東区「門前仲町駅前エリアまちづくり方針」(2026年6月)
江東区「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業 計画概要」(2026年10月16日)
第18回 江東区都市計画マスタープラン2022推進会議 会議録(2026年8月26日)
建設通信新聞「10月内にも都決手続き/33階4.9万平米複合施設」(2026年10月20日)
建設通信新聞「街区名は『TOKYO BLUE LINC』」(2026年10月)
どらったら!!「門前仲町駅直上の『タワマン計画』は33階建、高さ144m」(2026年10月19日)
TOKYO MX「計画白紙の『中野サンプラザ』再開発に新方針」(2026年8月26日)
Business Insider Japan「廃虚化進む“中野サンプラザ”問題」(2026年6月4日)
東京新聞「中野サンプラザ『再開発』なぜ白紙になったのか」
時事通信「23区マンション、過去最高の1.3億円」(2026年4月)
共同通信「東京23区、3カ月連続下落 8月の中古マンション」(2026年9月24日)
アゴラ「湾岸の高額中古在庫」関連記事(2026年10月)
ヤマタネ「越中島開発プロジェクトの計画策定パートナーを決定」(2026年3月18日)
江東区「門前仲町二丁目西地区第一種市街地再開発事業について」資料9-1(2026年10月16日)
ヤマタネ「越中島開発グランドビジョン」(2025年5月)

執筆者:柴田 光治
Webメディア「深川くらし」編集長/株式会社トラストリー 代表取締役社長

大手不動産会社グループで仲介・新築分譲・法人営業などを幅広く経験したのち、下町ならではの人のつながりと街の勢いに惹かれて深川エリアで独立。江東区・深川エリアに根ざし、地域のまちづくり動向や住まいの相談に日々向き合っている。

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