先日、初めてご来店されたお客様がこんなことをおっしゃっていました。「ChatGPTに、江東区で不動産を相談するならどこがいいか聞いたら、こちらの会社の名前が出てきたので相談に来ました」と。
正直、少しびっくりしたのと同時に、時代の急速な変化に改めて考えさせられたんです。AIがおすすめの会社まで紹介してくれる時代に、私たちのこれからの存在価値はどのようになっていくのか、と。今日は、そのことを考えながら書いた記事です。不動産業界の現状についても少し踏み込んだことを書いていますので、最後まで読んでもらえると嬉しいです。
プロしか知らなかった相場が、誰でも調べられるようになった
この仕事を長くやってきて、実感することがあります。以前は「相場を知っている」こと自体が、不動産会社の価値でした。正直に言うと、それで成り立っていた部分が業界には少なからずあったんです。それがポータルサイトの登場で崩れ始め、AIの普及でほぼ完全に崩れました。深川・清澄白河エリアの相場、ローンのシミュレーション、物件の比較まで、今やスマートフォンで数分でわかります。
これは購入される方にとって、本当にいいことだと思います。「知らないまま買わされる」リスクが下がりましたし、調べてから来てくださる方は話が早く、私たちもより深いところから一緒に考えられます。
不動産業界はずっと、情報の非対称性で成り立っていた部分がありました。相場を知っているのはプロだけ、という状況が長く続いてきたんです。それがAIの登場でほぼ崩れた。ただ、崩れたのは「データで測れる情報」の非対称性であって、別の非対称性はまだ残っていると思っています。
AIが得意なことは確かにあって、たとえばエリアの相場を調べたり、住宅ローンのシミュレーションを何パターンも試したり、複数の物件を条件で並べて比較したりといったことは、AIのほうがずっと速い。「このエリアの坪単価はどのくらいか」「この金額を借りると月々いくらになるか」「どの会社に相談すればいいか」といった問いには、かなり正確に答えてくれます。私たちの名前を紹介してくれることもあるようで(笑)、ありがたいことだと思っています。
一方で残っている非対称性は、現地に実際に足を運んで感じる空気感や、お客様と話しながら本人もまだ言葉にできていない優先順位を一緒に整理すること、そして何かあったときに「一緒に考えましょう」と言える人間が同じ街にいること。書類の分析はAIに任せられる部分も増えてきましたが、これはまだAIには難しいと思っています。相場の非対称性は崩れた。でも、お客様の暮らしに寄り添う非対称性は、まだ人間の側にあります。
業界全体が、好景気に甘えてきた
もう少し踏み込んだことを書きます。ここ10年ほど、立地のいい物件を買えば値上がりする時代が続きました。低金利が続き、都市部に人が集まり、価格が上がり続けた。その流れの中では、不動産会社としての実力に関わらず業界全体でそれなりの結果が出てしまっていたのが正直なところで、「買っても上がるんだから、まあいいか」という空気が業界にも購入者にも、あったと思います。
でも今、市場は変わり始めています。良い物件は価格を保ち続ける一方で、そうでない物件は静かに、しかし確実に価値を失っていく。そこに少子化と人口減少、さらには資材や人件費の高騰が重なって、「持てば必ず資産になる」という前提が崩れてきました。同時にAIで情報格差もなくなって、「相場を知っているだけ」では価値を提供できない時代になっています。これは業界全体への問いだと思っていますし、もちろん私自身への問いでもあります。
その結果を一番実感するのは、お客様と話しているときです。弊社にいらっしゃる前に、すでに何社かで物件を案内してもらっているお客様がよくいますが、マンションの「重要事項調査報告書」を一度も見たことがないという方が、思いのほか多い。築年数と価格だけ確認して、あとは「見た目の印象で気に入ったかどうか」で判断してきた、というケースが少なくなくて、物件の本質を知らないまま何件も案内されていたということになります。これは購入される方だけの話ではなく、案内してきた担当者がマイナス面をきちんと説明してこなかったということでもあると思っています。
坪単価で単純に比べられるのは、築浅物件だけの話
なぜこうなってしまうのか。理由の一つは、情報の見せ方にあると思っています。築年数の浅い物件は数字で比べやすく、坪単価がいくら、駅から何分、広さが何平米、これだけ並べればある程度の損得が見えてくる。X(旧Twitter)などでも「この物件は坪単価が安い」「このエリアでこの価格は高すぎる」といった情報が飛び交っています。そのような比較が成立するのは条件の揃った築浅物件が前提になっている場合がほとんどです。
ところが築年数が古くなると、話がまったく変わってきます。室内の状況はどうか、リフォームはどこまでされているか、修繕積立金はちゃんと積まれているか、管理組合は機能しているか、マンション全体でこれまでどんな修繕をしてきたか、耐震性は基準を満たしているかなど、さらに住宅ローンを組む際にも築年数や管理状況によって金融機関ごとに対応がまったく変わってきます。確認することがこれだけあると、坪単価や立地だけでの単純比較はできません。同じ築30年、同じエリア、同じ広さでも、一つひとつまったく違う物件なんです。そこを丁寧に確認せずに「価格が安い、高い」だけで判断してしまうと、買ってから後悔することになりかねない。
AIもSNSも、この複雑さを教えてはくれません。むしろシンプルな数字の比較を助長する面があって、だからこそプロが介在する意味があると思っています。そして、もう一つ正直に言うと、築年数の浅い物件を多く扱う大手の会社は築古物件への対応が苦手なところが多くて、築古が出てきたときに自社で丁寧に対応するのではなく買取業者に横流しして終わり、そういうケースは実際に多い。なぜそうなるかというと、リノベーションの知識と築古物件に対応した住宅ローンの通し方を知っているかどうかで、できることがまったく変わってくるからです。リノベの計画と資金計画をセットで考えないとお客様に本当の選択肢を提示できませんし、この知識がないと扱えない物件を丸投げするしかなくなります。そういう会社を何社か回ってから「他では難しいと言われました」と来られるお客様がいますが、難しいのではなくその会社が対応できなかっただけ、というケースが少なくありません。

私たちは「くらしかた創造企業」だと思っています
では、これからの不動産会社に何が問われるのか。私は自分たちのことを、ただ単に物件を売り買いする仲介業者というよりも「豊かな暮らしをデザインする会社」だと思っています。お客様が「楽しく暮らしていけるか」、10年後、20年後に「あの時の選択は良かった」と思えるかどうか。その問いを持ち続けることが、私たちの仕事の本質だと考えています。
深川という街に根ざして地元の人たちと顔の見える関係を築きながら、物件を紹介して契約が終わったら次、という仕事の仕方をずっと違うと感じてきました。「暮らし」という長い時間軸で一緒に考えること、それが私たちのやり方です。市場が選別される時代だからこそ、私たちのような会社が評価されると思っていますし、10年以上深川でこの仕事をやってきた実感として、そう確信しています。
中古マンション購入で押さえるべきこと、私たちはここから始めます
だから私たちは、重要事項調査報告書を一緒に読むところから始めます。「暮らしが大事」と言うと感情だけで選んでいいように聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、数字で確認できることはしっかり確認することが前提です。管理組合はちゃんと機能しているか、修繕積立金は適切に積まれているか、長期修繕計画は現実的か、建物の状態は築年数に見合っているかどうか。中古マンションはとくに管理の質によって10年後・20年後の姿がまったく変わりますので、確認すべきことを確認するのはプロとして当然のことです。資産価値をきちんと見た上で、そこに暮らしの価値を重ねて考える。この順番を、私は大事にしています。
「他社で難しいと言われた物件がある」「築古+リノベで検討しているが相談先がわからない」という方のご相談も、お気軽にどうぞ。
「住んでいる時間の得」も、ちゃんと計算に入れてほしい
家を買うとき、多くの人は「売るときにいくらになるのか」の損得を考えます。でも家は、売るまでの間、毎日そこで暮らすものです。30年住むなら10950日。その一日一日が楽しく暮らせるかどうか。これを私は「住んでいる時間の得」と呼んでいます。
好きな街に毎日帰ってくる安心感や、顔を知っている人がいるお気に入りのお店、休日の朝にぶらっと歩きたくなる川沿いの道、子どもが安心して外で遊べる環境など、こういうことは資産価値には出てきませんが、その人の暮らしの質には確実に出てきます。
「条件はいいんですが、なんか違うんですよね」と言われることがあります。私はその「なんか」を大事にしたいと思っていて、一緒に言葉にしていくのが、私たち「くらしかた創造企業」としての仕事です。深川という街のそういう側面を、以前こんな記事に書いています。よかったら読んでみてください。
深川くらし コラム
引き渡しは、スタートです
私たちは、物件の引き渡しをゴールとは思っていません。住んでから気づいた不具合のこと、そろそろリフォームを考えたいこと、将来の売却のタイミングなど、そういう話を気軽にしてもらえる存在でいたいですし、街にいるからこそずっと一緒にいられます。AIは24時間答えてくれますが、住んだ後の暮らしに伴走してくれることはありません。その部分を担うのが、私たちの仕事だと思っています。
AIで調べてきた話、そのまま持ってきてください。「まだ買うかどうかも決まっていない」という段階でも、もちろん大丈夫です。話しながら、一緒に整理しましょう。
資産価値も、住んでいる時間も、両方大事にしたい方へ。
まずは気軽に、話しましょう。
「まだ検討段階」「他社で断られた」「築古物件が気になっている」という方も、どんな入り口でも大丈夫です。
深川くらし(リフォーム不動産深川studio)へのご相談はLINEが一番スムーズです
この記事を書いた人
柴田 光治 株式会社トラストリー 代表取締役
サラリーマン時代に富岡八幡宮の例大祭と出会い、深川という街に惚れ込んだことが、ここでの仕事のはじまりです。「戦略ではなく、ただこの街が好きだから」を原点に、2019年より地域密着型のウェブメディア「深川くらし」を運営。不動産・建築業界での経験は40年以上に及びます。宅地建物取引士。日本不動産エージェント協会会員。



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