国税庁の「民間給与実態統計調査(2019年度)」によれば、20代の平均年収は20~24歳で263万円、25~29歳で369万円となっています。一般的なサラリーマンの平均年収が400万円台の中盤ですので、20代の平均年収は100〜200万円程度低い現状となっています。
しかし、20代であっても月々の家賃程度の支払いで住宅を購入することができる場合もありますので、購入をあきらめる必要はありません。ただし、住宅購入は人生最大の買い物になりますので、20代で購入するメリット・デメリットをしっかり把握した上で、適切な判断をしていくことが重要です。
この記事では、20代で住宅を購入することのメリット・デメリットを検証・分析し、住宅購入を成功させるためのポイントについて解説していきます。
目次
【1】20代で住宅を購入するメリット
まず、20代で住宅を購入するメリットについて考えてみましょう。
①返済を早い段階で終わらせることができる
20代で30年返済の住宅ローンを組んだ場合、50代のうちに返済が終わりますので、老後資金の準備に一足早く入ることができます。50代であれば定年退職前のタイミングとなりますので、退職後に計画を立てることと比べると老後資金の計画が立てやすいと言えるでしょう。
②月々の支払負担を軽減
20代は社会人期間が短く、年収も比較的少ないため、住宅ローンで借りられる金額は相対的に低くなります。少ない金額を長期で返済していくことになりますので、利息負担は重くなるものの、社会人経験を積んで収入が増えていくことを踏まえると月々の返済負担を比較的軽くすることができるでしょう。浮いた分はお子さんの教育費に充当したり、繰り上げ返済による早期完済を目指すといったことも可能です。
③家賃の総支払い額を小さくできる
20代のうちに住宅を購入することで、家賃の総支払い額を抑えることができます。
資産にならない賃貸住宅の家賃の支払を抑え、その額を住宅ローンの返済に充てる方が効率的です。住宅を購入する場合、条件次第ではありますが、月々の支払額を家賃の支払額と同程度、もしくはそれ以下にできる場合がありますので、負担感を軽くすることにもつながります。
【2】20代で住宅を購入するデメリット
次に、20代で住宅を購入するデメリットについて考えてみましょう。
①ライフステージごとの不確定要素が多い
結婚・出産・転職などを控えた20代の段階で住宅を購入した場合、ライフプランに変更があった際に軌道修正しづらくなる可能性があることはデメリットと言えるでしょう。年齢を重ねることで家族構成や収入・勤務地の変更など起こる可能性があることを踏まえて、先を見据えたプランニングが必要となります。
②購入可能な物件の価格帯が下がる
貯蓄や収入が30代以上よりも少ない20代では、頭金を十分に用意することができず、購入できる物件の価格帯を下げざるをえない場合があります。結果的に、条件が比較的悪い物件を購入せざるをえなくなり、将来的に売却もしくは賃借する際に不利になる可能性があります。
不確定要素が多いからこそ、将来の変化に備えて売りやすい・貸しやすい住まいを選ぶという考え方もありますので、検討の際には意識しておくと良いでしょう。
コロナ禍で20代の住宅購入の意識が高まっています!
<表>コロナ拡大の住まい探しへの影響
促進された | 抑制された | 影響なし | |
20代 | 51% | 10% | 39% |
30代 | 32% | 35% | 32% |
40代 | 28% | 26% | 46% |
50代 | 21% | 37% | 42% |
60代 | 25% | 24% | 51% |
出典:(株)リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」
上の表は、(株)リクルート住まいカンパニーが住宅購入者・検討者にコロナ禍が住まい探しにどのような影響を与えたかを聞いたもので、20代の51%が「コロナによって住まい探しが促進された」と回答し、他世代と比較して割合が高くなっています。
この結果について、さまざまな理由が考えられますが、コロナ禍によって自宅にいる時間が長くなったことで、賃貸居住者が多い20代において、これまで潜在化していた住まいの不満や課題が顕在化し、より住宅性能や室内環境の充実した住まいへのニーズが高まっていることが理由の一つと考えられます。
【3】まとめ
ここまで、20代で住宅を購入することのメリット・デメリットを検証・分析しました。ポイントは以下の通りです。
・20代で住宅を購入するメリットは、①返済を早い段階で終わらせることができる②月々の支払の負担を比較的軽くできる③家賃の総支払い額を小さくできる
・20代で住宅を購入するデメリットは、①結婚・出産・転職などのライフステージの変更の足かせになる可能性がある②購入可能な物件の価格帯が下げざるをえなくなる
・コロナ禍によって住宅購入意欲が高まっており、特に20代でその傾向が顕著となっている
20代で住宅を購入することは、メリット・デメリットの両方があり、購入者さまご自身で何を優先・重視するかを踏まえて検討する必要があります。
その際、ライフスタイルは十人十色ですので、購入経験のあるご両親やご友人に相談しても、必ずしも的を射た回答を得られるとは限りません。
その点、不動産会社の担当者は、さまざまな購入者さまのライフプランに最適な提案を行ってきており、ノウハウ・知見を蓄積した住まいのアドバイザーですので、お金のこと、住まいのことについて遠慮なく相談することができます。
何を相談していいかわからないという方には、セミナーや個別相談会などを行っている不動産会社もありますので、地元に精通した不動産会社を上手に活用してあなたに合った住まいを実現してください。
【著者プロフィール】柴田光治
株式会社トラストリー 代表取締役、リフォーム不動産深川studio|深川くらし相談所 代表
宅地建物取引士、2級FP技能士、公認 不動産コンサルティングマスター
不動産業界歴35年。大手不動産会社在籍中に執行役員として、主に売買事業を統括し不動産流通に関わる。その後数社の会社役員を経て株式会社トラストリーを立ち上げ、地域密着型の不動産会社としてお客様に寄り添ったわかりやすい提案を身上とする。
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