国交省が毎年実施している「住宅市場動向調査」。これは、国交省が住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的に平成13年度から行っている市場調査です。
今回は、この住宅市場動向調査の結果から、リフォームに関する気になる実態を取り上げ、リフォーム・リノベーションを失敗・後悔しないための押さえておくべきポイントについて解説したいと思います。
※令和2年度「住宅市場動向調査」調査概要
・調査対象:全国で2019年4月~2020年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯(リフォームのみ三大都市圏)
・調査数:3,794サンプル
・調査期間:令和2年9月1日〜12月14日
目次
【1】再リフォームを行うケースが増加傾向
以下の表は、三大都市圏でリフォーム工事を行った住宅について、前回のリフォーム時期を聞いたものです。
引用元:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)
「初めてのリフォーム」という人が36.5%で最多となっていますが、その割合は直近5年間で減少傾向にあります。一方、「前回のリフォームが5年以内」という人は26.2%で、こちらは逆に直近5年間で増加傾向にあります。
この理由について、同調査結果では触れられていませんが、以下のリフォーム工事の内容に関する調査結果から仮説を立ててみました。
以下の表は、リフォーム工事の内容について、回答割合が高い項目を抜粋して直近5年間の調査結果の推移を見たものです。
引用元:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)
上位項目の多くは直近5年間で減少傾向にありますが、唯一「冷暖房設備等の変更」だけが増加する傾向にあり、平成28年度の19.5%から令和2年度には30.3%まで上昇しています(グラフ紫色の線)。
これらの結果を踏まえると、5年以内に再度リフォームを行う割合が増加する傾向にあり、その工事内容の一定数が冷暖房設備等の変更である可能性が高いと考えることができそうです。
【2】住生活空間の改善は実施判断が難しい
この仮説に基づいて考えていくと、失敗・後悔しないリフォーム・リノベーションの押さえておくべきポイントが見えてきます。
というのも、生活環境の改善(断熱・気密性の向上など)を目的としたリフォーム・リノベーションは、修繕などを目的としたリフォーム・リノベーションに比べて目に見えた効果を見出しづらいため、リフォームの実施判断を工事の高い・安いだけで判断してしまわれる方が多い傾向にあります。
価格の安い方を安易に選んでしまった結果、短いインターバルで再度リフォームを行うといったケースが増える傾向にあるのかもしれません。
【3】中古マンション+リノベーションで失敗・後悔しがちな5つのポイント
住み替え検討者の多くの方は、時間をかけて中古マンションの購入、リノベーション内容の検討を慎重に行います。しかし、インターネットを検索していただくと分かる通り、物件選びやリノベーションに失敗した、後悔しているといった事例を目にすることは、残念ながら少なくありません。
そこで、ここからは中古マンション+リノベーションで失敗・後悔しがちな5つのポイントと、それらを回避するためにどうすればよいかについて考えてみましょう。
①居住環境の失敗・後悔談
・目の前に建築計画があり、日照に影響しそう
・風通しが悪い
・上下階/隣戸の生活音が気になる
②物件の立地に関する失敗・後悔談
・夜は人通りが少なく、帰宅時の治安が不安
・朝は開かずの踏切があり、想定よりも通勤に時間がかかった
・土日の近隣道路の渋滞がひどい
③間取りに関する失敗・後悔談
・収納のスペース/数が足りない
・動線が悪いため、家事が非効率
・リビングが広すぎて冷暖房が非効率
④金銭面や資金計画に関する失敗・後悔談
・想定していたよりも、購入・施工・メンテナンスなどに費用がかかってしまった
・引っ越し業者の繁忙期と引っ越しが重なったため転居費用が高くなった
・資金計画に余裕がなく、我慢することが多くなってしまった
⑤業者選びに関する失敗・後悔談
・大手の施工会社に依頼したら相場よりも費用がかかった
・杜撰な工事で設備に不具合が生じ、対応も遅い
・担当者の経験が浅く、適切なアドバイスを受けられなかった
①〜③については、曜日・時間帯を変えて複数回物件を見学する、図面を見ながら生活動線をイメージするなど、より詳細な生活シーンをシミュレーションすることがリスクを回避するために重要となります。
④の金銭面は、無理のない返済計画を立てるのはもちろんのことですが、住宅購入費用やリノベーションの施工費用以外にかかる費目をリストアップしておくと良いでしょう。
⑤の業者選びについては、検討している業者の評判・口コミをインターネットで事前に確認しておくようにしましょう。ホームページで過去の実績や購入者インタビューなどを掲載している会社もありますので、併せて確認しておくこともおすすめです。
【4】まとめ
現住居に不満があり、中古マンション+リノベーションによる住み替えで課題を解決したいという方はとても多いです。しかし、ご自身の住まいの状況を正確に把握し、その上で課題・ニーズを見極め、その解消のために最適な施策と費用感(費用対効果)を検証することなくして、失敗・後悔することのない住み替えを実現することはできません。
当社では、お客さまにセミナーや相談会にご参加いただき、今の住まいの不満や今後どうしていきたいか(ライフプラン)などについてじっくりお話を伺うことを重視しています。その上で、お客さまのライフプランを実現するために最適なご提案を行い、お客さまの住み替えが納得・満足度の高いものとなるようにお手伝いをさせていただきます。
【著者プロフィール】柴田光治
株式会社トラストリー 代表取締役
リフォーム不動産深川studio|深川くらし相談所 代表
宅地建物取引士、2級FP技能士
不動産業界歴35年。大手不動産会社在籍中に執行役員として主に売買事業を統括し不動産流通に関わる。その後複数の会社役員を経て株式会社トラストリーを立ち上げ、地元密着型の不動産会社としてお客様に寄り添ったわかりやすい提案を身上とする。